2022年09月13日

タイムスリッパー

もう一度伺いますが
今日は共栄八年九月十三日なんですか
当たり前じゃん、っておっしゃるんですね

いや、実は私、別の年号に生きてたような記憶がありまして
実はちょっとね、悪戯気分って言いますか、子どもに戻ったような

そんなね、軽い気持ちでやっちゃったもんですから
そう、あの黄色のバナナの皮

あれが落ちてたんですよ、道にね
そんなの見るとほら、やってみたくなるもんじゃありませんか

やったんですよ私
踏んづけたら滑るのかどうか試したくなって

ほんの軽い気持ちだったんです
ひょいって軽く踏んだら、すってんころりん

頭、打ったのか目の前が暗くなって
気が付いたら病院のベッド、ってあれです

えーっ、馬鹿なことやっちまったなあって
看護師さんに笑い話したら、すぐにお医者さんが飛んで来て

それからいろいろ検査ですよ
後で訊いたら、私、国立博物館の床に倒れてて、保安員の方に見つけられたんだそうで

バナナの皮なんてある訳ないはずだって言うんです
それでいろいろ検査されてたんですが

ある晩、夜中にお腹が空いて堪らなくなったんで
休憩室の自販機、…ってわかります?

とにかくそこに行こうと思って廊下を歩いてたら清掃のワックスの残りがあって
すってんころりん、ですわ

今度は病院のベッドじゃなくて、空き地でした
遠くでわあわあ言う声が聴こえていて

カーンっていう音とか、わーっていう声がもっと大きく聞こえて
ああ、どこかで野球の試合、…野球ってわかります? それ、やってるんだ、って

懐かしいなあ、って気持ちになったんですよ
だって私、昭和っていう時代の終り頃に生まれたんで

声が聴こえる方に歩いて行くと
紺色の、そう昔のお巡りさんみたいな恰好の人が自転車で、…自転車ってわかります?

そう、とにかく人の力で動く乗物なんですけど
それに乗ってるお巡りさんが、私の病院の服見てどっから来たのって訊いてきて

私があったままを言うと、とにかく一緒に来てくれって交番に連れてかれることになって
自転車引っ張って歩くお巡りさんと歩いてると、パチンコ屋さん、…パチンコ屋、知ってます?

とにかくその店の前を歩いてると、店内で騒ぎがあって
お巡りさんがその喧嘩みたいなのを止めに、お店に入っていって、騒ぎがもっと大きくなって

誰かお店から箱持って飛び出して来たんですけど
その人、躓いて箱ひっくり返してパチンコの玉、ぶちまけたんです

私、どうしたもんかと見てたんですけど、ざぁーってパチンコ玉が一杯流れて来て
その人が、俺の玉だぁー盗るんじゃないぞーって、大声出すもんだから

私、慌てちゃって、盗りませんよーって言いながら、そこから離れようとしたら
すってんころりん、ですよ、またやっちまったんです

それで、気が付いたらここでしょ
すごい音で音楽演ってるここ、ディスコですか、クラブですか?

違う、トリップバーだっておっしゃるんですね
そうですか、私、大分慣れたんで、そんなに驚かないんですけど

とにかく、病院からずっとお腹空いたままですし
喉も渇いてるんで、なにか飲み物か食べ物、ありませんでしょうか?

*

若者は気が好い人物だったらしく、喧噪の中に入って行ってやがて手に何か持って戻って来た
カップに入ったどろりとしたそれは、エネルギーメイトという飲める食べ物らしい

それをもらおうと手を伸ばした私の指先が、カップの表面に着いた液体みたいな食べ物で滑って
カップが落ちて、どろっとしたそれが床にぶちまかれた

こうなると、一歩も動けない
凍りついたように動けない私に、気の好い若者が助けようとして寄ってきて…
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2022年08月13日

3つの超能力を授かった僕のその後の話…6

夏ですなー
むし暑いのに節電とかで、夜ワンルームに帰ってからのエアコンの使い方に神経遣うようになった

一人で、帰ってきてコンビニで買ってきたつまみなのかおかずなのかわからんものと
本当は非常用ご飯を電子レンジで作って安ビール缶並べて、テレビ観るのが僕の晩飯だ

ご飯だって一人炊き用の電気釜あるんだけど
食べ残したのが腐ったことがあって(急に飲み会があったりとかでさ)非常食の方が便利なんだ

彼女とか居たら帰って来るのも楽しいのかも知れないけど
なんか会社の先輩の話を聞いてると楽しい4割:辛い3割:後悔3割らしい

年が上がってくと楽しいが減って辛いが増えて、後悔はあきらめに変ってくらしい
ということで、あまり考えないようにしてるけど、一人で晩飯の後片付けして

明日の会社のこと考えて(根から真面目な僕)もう寝よ、っていうとき
こんな風にずっと時間が経ってくんだろかって考えが、ふっとやって来るのがやだよな

ところで超能力のことだけど
あれから大して役に立ててません

カラスのカースケはときどき電線から挨拶して来るけど
生活が大変で今日一日をやってくのに四苦八苦(って言葉知ってる!)だって、ぼやきばっか

瞬間移動は便利って言えば便利なんだけど
絶対他人に見られちゃまずい(だって犯罪に関係してるって思われ易いもの)ので滅多に使えないでしょ

未來受感なんて、それを選んだら良くないことになるよ、って警告ばかりで
こうすれば金儲けできるよとかのご託宣は全然ないからちっとも僕のラッキーは増えない

とか言ってると愚痴ばかりに見えるけど
別にそんなに困ってないし、最近は休みの日に散歩してるわんこの話し聞くのにはまってる

特にわんわん言ってなくてもテレパシーみたいにしぐさで伝わっても来るし
大体は飼主さんの健康の話で、意外に食事や待遇については話さない(わんこの仁義?)

その話を聞いてるうちに、なにか健康相談みたいなことできるのかな、と思ったけどその先が…ね
勤め先の「街中情報システム社」は、なんでもありな会社だから、いつかモノになるかも

そんな僕の平凡な毎日は、もうすぐ終わりを迎えることを
未來受感能力が、ちまちま感じ始めてたんだけど、初めての感覚なんで僕は気付いていなかった、んだ
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2022年06月30日

遺伝子ジゴロ

個人的な情報を護る法律があったのは少し前のことで
今では個人の遺伝子は日本遺伝子情報研究所(JGIL)で調べてもらい
僕みたいに自信が持てる者はフルオープン登録していることもあるのだ

フルオープン登録って言うのは自分のDNAを全部公開してるってことで
よくある自信の持てる情報だけ開示してるセミオープン登録とは違いなにもかも見せちゃってる状態
つまり僕が持っている遺伝子はあらゆるる病気にも強く歯も眼も耳も悪くなる要素が殆どない

背はそこそこに高くなり中年になっても太らない高血圧にも糖尿病にも縁が無く
見た目もそこそこイケメン側の要素を備え知能も感性も運動神経も上位グループに属している
今の僕自身は別にエリートクラスではないにも関わらずまずまずの印象は与えられるのはその力だ

遺伝子情報フルオープンしてると傍に寄った人の設定スマホにそのデータが取り込まれる
僕ほど欠点のない遺伝子ともなるとスマホの“最適な出会い”アラームが鳴り響き
遺伝子に自分と我が子の将来を託したい女性たちは目の色が変わるという訳だ

実際にはその遺伝子を持つ男(女性が遺伝子開示している場合もあるが…)が誰なのか
特定に至るまでには様々な有料アプリの力を借りないといけないが
とにかく捜し当てるまで頑張りついにそれが僕だと分かると一気にテンションも上がるというものだ

そんな訳で僕はこうしてあくせく働くこともなく
全く気ままにふるまっていても
様々な階層の女性たちがあれやこれやしてくれるし愛情もお金も注ぎ込んでくれる

そうそう僕の数少ない発露している才能というのが
どんなお喋りも聞き流さず相手の言いたいところを理解してあげられるという力と
もひとつ大事なのが僕の眼から湧き出ている愛情を感じさせる瞳の力だと思う

この二つの力と遺伝子情報の開示で
僕は多くの女性たちを幸せに限りなく近い状態にしてあげられ
女性たち同士が僕を共有していても平和理に僕を養えるようにバランスを保っていられるのだ

しかし誤解してもらっては困る
そんな僕も年に一度の遺伝子情報再登録に備えて
今の僕のままできるだけ永く女性たちに愛されるよう地道な努力は続けてないといけないんだよ
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2022年06月12日

超人戦隊「JH-ジャスティス ハンマー」…(3)反応1.2

ケニヤ共和国最大の都市ナイロビ市の市民440万人を、あらゆる傷病から守っているケニヤッタナショナル病院1階にある一般外来内科診療室のドアを開けた医師Aは、今日の患者がやって来る前に、デスクのPCを起動させた

この1年間、文字通り不眠不休で、診療室を訪れる老若男女市民の診察・治療に当っていたが、全く疲れていない身体とは別に、頭の奥で蠢く不安・不満・苛立ちの感覚が日増しに強くなることに悩んでいた

開いた画面には、最新のネットセキュリティをパスした新着メールがあり『超人1号ドクターAへ 超人戦隊発足式ご招待! 即時 JPN TOKYOに集合されたし “パミュラルルメルラ”』とあった

1年前、ナイロビ国立公園で出会った金色に光る不思議なライオンが咥えていた、プラチナらしき板に彫り込まれていたラテン語“パミュラルルメルラ”の綴を見て、やっと神が自分を参集してくれたことを知って、涙がこぼれた


中国長江デルタ地帯の大都市抗州市の、1200万人を超える市民の台所に直結しているスーパーマーケット「パンズージゥ」の副店長に最近昇格したばかりのBは、ありあまる自分の体力が、ビールケース10段積みとか、白菜100個入りケースを鼻歌交じりで運ぶことにしか使えていない現実に、鬱積していた

2時になって、遅番の昼食を摂るため、休憩室兼食堂に行ったBは、いつもの癖でスマホの画面に目をやって、自分宛のショートメールが着信していることに気付いた

そこにあったのは『超人2号副店長Bへ 超人戦隊発足式ご招待! 即時 JPN TOKYOに集合されたし “パミュラルルメルラ”』というメール

10か月ほど前、23歳の若さではあるが中国歴史を愛するBが、市中心部から西にはずれた処にある古寺霊隠寺を訪ねた際、金色に輝く観音が現れ、Bに常人をはるかに超える不思議な力を授けてくれた折り、自分の額に貼られていた御札にあった文字“パミュラルルメルラ”と同じ署名に、ああ時が来たんだと確信した


…3番目と4番目の超人については、次の機会にご案内しよう
 “パミュラルルメルラ”
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2022年05月17日

マトリックスな世界のボク(2)…選んだ道

人生には様々な楽しみがあると、どの教育システムも教えてくれるけど、ボクはまだ“楽しみ”という奴に出くわしたことが無い

ちょっとだけこれかなというのが、さっきシティの4番口から自然食植物園にハントに行ったとき、急に飛び出してきてボクを喰おうとした、猪鼠の大きく開いた口にマンゴ柿の枝を突っ込んでやって、苦しんでる間に電磁カッターでさくさく刻んでやったときの、胸が膨らんで頭がぽんぽんした感じ。あれかな

猪鼠もやっつけるといい感じになるんだけど、最高は大鴉をだましてハウスに閉じ込めて、があがあ喚いてるのを電撃ショックで躾けるのも好きだな

こういう感じを楽しい、って表現するんなら、ボクの人生には“楽しみ”が相当あるってことになる
ポッドに入ってる人たちは、あの栄養液の中で生きてるらしいんだけど、たまにポッド漕を覗いてみても、皆ぼやっとした感じでふよふよしてるだけで、そんなに楽しそうじゃない

ボクに遺伝子を授けてくれた精巣保有者と、全然見たことない卵巣保有者が、ボクの“海の親”って言うらしい。ボクもいつか卵巣保有者に出会って、親になってみたい

それが実現するかどうかは、AIさまの“気まぐれ”次第だって、ボクと一緒に十年暮らしていた精巣保有者が、何度も教えてくれていた

三年前からボクらは別々に生きることになって、あの精巣保有者とは全然会えてないけど、ボクの脳の中には3D映像みたいにしっかり残っている

“始祖物語”によると、初め人類はこの惑星の諸所に分離生息して、それぞれに文明を進歩させていった
やがて地域差による進化速度の違いを基に、開発可能な資源の収奪競争が起き、武器の発明と貨幣経済の進展が人類共存の共通ネックになる時代を迎えた

その後、全人類共存共栄を理想とする“多様化社会推進思想”が生まれ、AIに管理された“地球資源有効活用条約”が発効し、各民族の格差解消が進んだが、その結果、全人口が100億を突破することが必至となり、AIによる人類増加ペースのスローダウン政策に転じたが、大部分(特に発展途上国)の人類が、増加抑制を好まず、近未来における地球全生物破たんが確実になった

人類による人類の統治は、選挙権を持つ大衆により不安定になり、世界大戦の危機を迎えたところで、AIより“人類救済計画”が提案され、その結果、限りある資源を生存ポッドの維持管理に回し、ごく少数の“自然生活実践派”以外の大多数(当初は全人類の90%と見積もられていた)は、食や健康や疾病の心配がない“ドリームイン”状態で、各自の好みに応じた“全てに自由な生活”を送ることができた

…という“始祖物語”は、全世界のシティの中心にある“ライブラリ”に行けば、誰でも(文字や言葉が通じなくても)理解できるようになっている

でも“全世界”って、本当にあるのか、どこにあるのかはボクは知らないんだけど


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2022年04月27日

超人戦隊「JH-ジャスティス ハンマー」…(2)送信

1人目の超人はケニア共和国の首都ナイロビのケニヤッタナショナル病院の内科診察室のドアを開けた

2人目の超人は中国浙江省杭州市のスーパーマーケットの副店長で遅番の昼食を摂り終わって席を立つ

3人目の超人はドイツ連邦バイエルン州ミュンヘンの市警本部総務課の夜勤を終えてロッカールームで着替え中

4人目の超人はアメリカ合衆国テキサス州ダラスの自宅で就寝中

5人目の超人はブラジルサンパウロの路上でぐっすり寝込んでいた

6人目の超人はクアラルンプールのレストランの厨房でフライパンを振っていた

7人目の超人は見つかっていない

8人目の超人は東京のマンションから6人の超人に向けてメールを送信してコーヒーブレイクタイムに
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2022年04月20日

マトリックスな世界のボク(1)この世界

雨が降っている
体温が少し下がり気味なので場所移動せざるを得ないと判断
ショッピングマートなら保温効果のある衣類は上のフロアにあるだろう
レスキュー動力でかろうじて動く昇降ポッドがあったので乗り込んでガイドボードに触れる
乗客のスキャンが一瞬で終わり暖かさと食事の欲求を判断して3D映像が行く先を案内してくれる
7階の衣料品売場もまだ稼働していてフロアの照明が点き床のサインがボクの望みの売場を示す
支払いはまだ使える個人消費ナンバーで済ませ次の18階のビュッフェフロアを目指す
このフロアもボクの入室で活き返る
料理というものはもう無いが生体維持栄養素入りのハイパーメイトはまだ出て来る

この生き方を選んだボクにとってシティは保護者であり教育者であり召使であり全てである
人類は何世紀も前にこの惑星の資源消費を極限にまで抑え
人口トリアージを否定し全人類を公平に生存させる道を選んでAIに委託した
全人類99.999億人はポッドに入り生命限界の200年間をAIが調整して採取している惑星資源で生かされ
受精時から老衰まで各自の望むままの疑似人生を送っている

ボクのご先祖は調整人生を選ばなかった0.001%の人間でスタート時は10万人いたらしいが
今では5万人を切っている
全地表に100か所あるシティの行き届いた保護はあるが
人類に滅ぼされずに残っている生物種との不適切な接触や
この惑星の大気の営みや地殻内活動による自然災害
個人メンタルの失調による自己否定動作がAIでも発見できなかった際の自消など
いわゆる不慮の事故による減耗で少数化しているのだ

これらの情報は全て等しく残存生体人類には時々刻々知らされ
可能な限りの安全策がAIから提示され
また各個が望めば途中離脱で生体寿命の途中から保護ポッドに入ることが許されているが
最初にAIの推奨を断った家系である残存生体人類だけに“オリル”ことはほとんど無かった
ボクも育成保護カプセルを出て一人でこの世界を歩き始めてから25年経つが
自分の選んでいる生体人生になんの不満もない
ただ同好生体人類とは今までに数えるほどしか会ったことがなく
意思疎通アプリを介しての友好儀礼はそんなに楽しいものとは思えなかった

好きなように好きな所を旅して好きな景色に埋もれ大自然の奥深い営みを感じる
今の人生を愛しているのだ
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2022年04月09日

超人戦隊「JH-ジャスティス ハンマー」…(1)集結

実は、この世界には、世間からその存在を秘して活動している超人が7人いた

彼らは、空を飛べ、銃弾を跳ね返し、一日中呼吸を止められ、一万度の熱に耐えられ、タワマンを持ち上げることもできるというようなスーパーマンであったが、その力は人類を救う正義の行使に限られているため、なかなかその力を発揮できずにいた

うっかり、身の周りでその力を見せれば、それを利用して一儲けも二儲けも考える人間が、常に周りに居るのを分かっていたから、そうせざるを得なかったのだ

彼らは、彼らにその力を与えてくれた神のような存在と、決して私利私欲にその力を使わないと、堅い約束を交わしていたのだった
更に、彼らは互いの存在については知らされてはいず、各々が孤独の悲哀を感じていた

偶然、重大事故に遭遇した折には、自分の存在を秘したまま対処せねばならないことに困惑し、そっとその場を離れる始末だった

この惑星に、10億体あたり1体の割合で超人を作った神のごとき存在は、事態が一向に好転せず、ますます悪くなる現状を観察して、特別に第8の超人を設定することにした

第8の超人は、体力的にはこの惑星のプロスポーツ選手とほぼ同じレベルだったが、頭脳が超人だった
一週間睡眠せずに10のテーマの論文を書き、IQは300を軽く超え、それでいて、人づきあいも良く、おまけに背も高いイケメンなので、よほどのひねくれ者以外は、男も女も誰でも魅了されてしまう

第8の超人は、その優れた分析力でこの惑星の行く末を何パターンか推測し、どの場合においても現在の人類のままでは、早晩この惑星の環境を悪化させ、要する時間の違いはあれ、衰退の一途を辿るとの結論を得た

しばし再考した末、彼は人類を救うことを決断し、自分にこの超人脳を与えてくれた、神のごとき存在が示唆していた他の超人たちを、自らの人類救済計画の実行部隊とすべく、探すことからスタートした

第8の超人サカベには頼もしい味方があった
それは、超複雑な接続キーワードを解明して無断借用している、アメリカのスーパーコンピューター「Summit」と、日本のスーパーコンピューター「富岳」による演算サポートである

まず、全地球上のありとあらゆるSNS会話の中から、ありえないものを見聞きしたという発信から、超人の痕跡を拾い上げて解析し、時系列と場所を重ねて分類する

すると、およそ6つの特定事案と3つの疑似事案が抽出された
明確に特定できた超人に向けて、かの神のごとき存在が唯一自称名詞として使った“パミュラルルメルラ”という発信者名を付けて、簡単なDM<集まれ>を、それぞれの母国語で送信した

疑わしき候補者3名は、引き続きチェックを入れることにして、まずは6人の超人とTOKYOで会い、活動の停滞の原因を探り、問題解決を図ることから始めたのだ
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2022年03月13日

正義の味方バージョンU

とある飲み屋街の路地裏で
場に似合わないしゅっとしたイケメンから話しかけられた

君は正義の味方になりたくはないか?
はあ?なに言ってんのと思ったけど

そりゃなれるもんならなりたいっすよ
って答えたらじゃあってんで星の形のペンダントをくれた

驚いたことにそいつはおいらの掌に乗ったと思ったらふわっと溶けて
おいらの体に浸み込んじまったぞ

急においらは力が漲って
何でもできる気がもりもりしてきた

イケメンはもうどっかに行っちまった
おいらの方はとりあえず馴らし運転しなきゃって思った

んで辺りを見回したら
狭い路地なのに大きな顔して入り込んで来た外車があったんで

ほいっと持ち上げてやったらまじ簡単に持ち上がるし
その車の持ち主みたいなやばそうな奴ががあがあ吠えるんで

車はほかしてがあがあ言ってる奴の肩をぽんってどついてやったら
通りの反対側にぶっ飛んでってのびちまった

それでおいら無敵だって確信できたんで
んならって空に向けてジャンプしてみたらびゅーんって飛べた

それからのおいらは正義の味方をばりばりやる積りだったんだけど
それが無いのよな 世間には

んでしょうがないなあってくさくさしてたら
あるじゃん世界には

まずよその国に勝手に攻め込んだ悪い奴らの親玉をブッ飛ばそうって決めた
ところが ところがだよ どこにいるのかわかりゃしない

Gマップで調べて悪の国の首都までびゅーんとすっ飛んでって
らしい建物に飛び込んでったんだけど警備の連中がわらわら出て来る出て来る

ばりばり機関銃撃ってくるのを無視しまくりで
ぼんぼん兵隊みたいな連中をブッ飛ばしてったんだけどきりがないのよ

まあとにかくみんな壊しちゃえってんで
ほぼほぼ玉ねぎ頭の建物は無くなっちまった

その後は仕方ないからそいつらが攻め込んでいってる国に飛んでって
戦車とか戦闘機とかミサイルとか適当にばきばき壊したった

やられてる国の皆はむちゃくちゃ喜んでくれて
そのあたりは言葉がわからないおいらでも 雰囲気でわかるんだよな

3日間くらいそれを続けてたら世界の話題になって
やられてた国の人の中に日本語喋れる人がいて おいらを救世主って言ってくれた

やっぱいい気分だよね
攻め込んで来てた方のブッ飛ばした兵隊はずいぶん死んじゃったみたいだけど

とうとう攻め込んだ国の親玉が許して下さいって謝ったんで
おいらも許してやろうかって思ったんだけど 世界が赦しちゃいかんって言うんだ

最後をしっかりやっとかないと
この後も同じようなことやる奴が出て来るって言うのさ

だけどおいらにしたって随分いろいろぶっ壊したし死なせちゃったし
もういいんじゃないのって思うんだけどそうもいかんらしい

それからおいらは世界の正義の味方なんだから
間違って動いちゃまずいですよって言う頭の良さそうな人がいっぱい出て来た

もうおいらにごちゃごちゃ言って来ても関係ない!ってでかい声出して
これから先もおいらの思う通りの正義の味方でいきたいのになぁ
posted by Beeまたの名は熟年のK at 15:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2021年11月07日

やってられるか!!

暑ーっ、暑くて目が覚めちまった
温度計は31℃を表示している
10月に入ったっていうのに、真熱帯夜がもう10日も続いている

“目指せ!脱炭素社会”とかいう運動が喧しくて
電気代は上がるし、停電はしょっちゅうだし
物価は上がり続けてるし、会社は休みばかり多くて給料は下がったまま

それでも、クビにならないだけマシだと、親も友達も皆そう言ってる
僕の安アパートの消費電力の多い旧型のエアコンだと、起きてるときしか使えない
それに来月は、ワクチン接種の月だから、そのお金も用意しとかないといけない

そんな訳で、今夜も1袋100円のモヤシと、6個で500円の卵と人造肉のハンバーグの夕食
ご飯はもちろん古古古米
それでも、住む処もありちゃんと食べていけるだけ幸せだと、ネットニュースが囁き続ける

そのネットの裏SNSによると、こんな世の中だけど、っていうかこんな世の中にした連中は
随分しっかり悪どく儲けているらしい
その証拠に、街なかで見る大きな車は数を減らしてないだろ、と裏SNSではもちきりだ

たまに出勤する会社で会う同僚も上司も、いつも言葉少なくやることだけやると、さっさと退社する
どうせ帰りに一杯なんてできないし、ぐち言ったってどうにもならないこと分かってるから
…寝付けないんで、スマメ(スマートメディア)を点けると『やるぞ!!』とフラが立ってた

今から出かけて間に合うんだろうか
でも僕ら一人一人が意思表示しないと
国も区もマスメディアも政治家も役人もコメンテータも、誰も分かっちゃくれない

レンタル3Dコピー機で作っておいたアレにアレを込めて
覚悟して街に向かう
ほんとに皆が集まってたら僕はどうなるのか分からないけど

とにかくやってみようとするしかないんだ、僕らみたいな真面目に生きてきた者たちは!
posted by Beeまたの名は熟年のK at 14:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説