2019年04月18日

ランボー超人Bの物語 その2朝が来た

ぱちっと目が覚めた
いろんな朝の音が耳に飛び込んで来たが、大事じゃないと思った音は次々ボリュームダウン

なんだかものすごく腹が減っている
冷蔵庫を開けて牛乳の1gパックを取り出してそのままがぶ飲み

食べ残してたバタールをぱくぱくぱくっと食べ切ってしまって
牛乳も飲み尽くし、まだなにかないかと冷蔵庫を開けマーガリンがあったんで、それも食べてしまう

急にエネルギー満タンになった気がして、気持が落ち着く
テレビのリモコンを、壊さないようにそっと操作してニュース番組を観ることにした

S市で子供が軽トラにはねられて重体というニュースに続いて
M市のアパートで火事があって82才と79才の夫婦と連絡が取れていないというニュース

折角俺がスーパーマンになったってのに、これじゃぁしょうがない
だって、起きてしまったことを知ったってどうしようもない

こりゃあ、事件が起きる前に、そこにいることなんてできないんだから
事件や事故は、よっぽど運がなけりゃ防げないんだ、と俺は納得した

だが、これで引き下がったんじゃ超人になった甲斐がないってもんだ
じゃあ、確実にある“悪”を叩き潰せばいいんだ

確実にある“悪”って言えば、暴力団とか汚職政治家とか、外国の独裁者かな
てなことを、ぼんやり考えていたが、気が付くと時計は8時を過ぎている

いかん遅刻だ、と、どっきりしたけど、そうかもう超人なんだ
空を飛んで行けば間に合うし、いやいやもうあんな会社辞めたっていいんだ、とほっとする

だけど、いいのかそれで、という俺もいる
どうやって超人で食っていけばいいんだ

なにができるか、まだよく分かってないんだから
とにかく性能テストして、それから金を稼げそうな仕事を始めたらいいんじゃないか

そうだよな、映画のもテレビのもマンガのヒーローも
なんとなく活躍してるけど、そりゃうまく相手が出て来てるからで

まず相手探しから始めなきゃいかん俺とはちがうもんなぁ
都合のいいナントカ戦隊本部だって、現実にはある訳ないし

ということで、まずは普通に会社に行くことにした
普通に満員電車に乗ってだ
posted by Beeまたの名は熟年のK at 11:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年04月09日

ランボー超人Bの物語 その2

アパートに帰るったって、そこは折角超人になったんだから
ぴゅーっと空を飛んで帰るよね、フツー

だけど、さすがにこの格好じゃ変だろ、って俺は思ったんだ
だって会社帰りに飲んだ後だもん、リーマンまんまじゃん

これで空飛んでたって、変な奴にしか見えんだろ
やっぱ、これから先、超人として活躍して有名になる予定の俺だからさ

だもんで、走って帰ることにした
さっきのトイレぶっ飛ばし事件みたいな、スピードの出し過ぎにはくれぐれも気を付けんといかん

まずはスローに慣らし運転で走ってみた
出る出る、ゆっくりめの積りでも、走ろうとするとスピードが出ちゃうんだ

まるで、ぐるぐる回転する脚の上に乗って走ってるようだ
それで住宅地を抜けて、国道に出た

ここなら大丈夫、と思ってスピードアップすると
あっと言う間に先行して走っている車に追いついて、追い越しちまう

乗ってる奴のびっくり顔が、8K並みにくっきり見える
ドライブレコーダの画像、後でNETに上がっちゃうかもな

ま、しょうがない
超人になるってこたぁ、そういうもんなんだよなって、自分で自分に言う

アパートのドアを壊さないようにそこに気を付けて、部屋に入る
電気点けなくても、部屋の中ははっきり見えてる

ベッドに寝転がる時も、その前に部屋着に着替える時も、力の加減を調節するのが大変だった
超人になったら、とにかく慌てないこと、焦らないことが肝心だなって、これが1日目の教訓だな
posted by Beeまたの名は熟年のK at 15:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年04月07日

ランボー超人Bの物語

ある日、宇宙人(地球人じゃないと思うよ)の時空滑走機ってのに
出合頭に衝突され、時空警察(?)に訴えないことを条件に、超人にしてもらった俺

入社して6ヶ月の外食チェーンの店長見習い(正社員採用だったんで)の前途に
なんの未来も感じてなかった俺は、渡りに船と(この表現〇だよね)超人人生を選択したのさ

超人化は、宇宙人の時空滑走機の中で行われたんだと思う(超人化OKしたらすぐ気を失ったんだ)
頭がはっきりしたんで、Gショックを見たら23時17分で止まってた(スマホは充電切れになってた)

居酒屋チェーンで飲んで、本部の上司のくだらん説教からエスケイプしたのが10時ちょっと前で
それからコンビニで缶ビール買って、どこかのちっちゃな公園のベンチで飲んで

パトロールのお巡りさんが来るのが見えたんで、慌てて公園から出ようとしたら何かがぶつかった
なんで公園の中に車!?と思ったのは一瞬で、どんとその場に倒れちまったそのとき

『この時間帯のこの場所に決して惑星人などいないはずなのに…』ていう女?の声がしたよ、確かに
なんだぁ、と反射的に思ったけど体は動かず、視界が赤くなってたから出血してるみたいだった

どうもすみません…みたいな声が頭の中に響いて、俺は、いいから病院に連れてってくれ、と思ったんだ
で、それは無理だけどお詫びにこの惑星住民の基準からしたら、超人みたいにするから

それで許してな、みたいなこと言って、もう気を失いそうな俺が
なんでもいいから助けてくれよ、とか思ったとこまでで、記憶が途切れてるんだ

こうして、両足でしっかり立つことができて、肩も腕もぐるぐる回せるし
体調もいいみたいだから、まあいいか、と

で、ちょっと軽く走ろうとしたら、すんごいスピードが出ちゃって
コンクリートのトイレにぶつかっちゃって、しかもそのトイレをぶっ壊しちゃって、まだ走る

慌てた俺は急ブレーキ、って言うか立木のところで急停止さ
だってそうしないと、公園の外に並んでる住宅に突っ込んじゃいそうだったもの

落ち着けよ俺、と3回くらい唱えてから、辺りを見廻したら
さっきのトイレの破壊音がでかかったんで、そこらじゅうの家の犬は吠えるは窓が開く音がするは

パトロールのお巡りが無線で話す声はするは、とんでもない大騒ぎになったんで
俺はびびって、とにかくここから逃げたい、って心底思ったんだ

それで、思い出したのが俺は超人にしてもらった、ってこと
じゃぁってんで、半信半疑夜空に向かって飛び上がってみたら、飛べる飛べるぐいぐい飛べる

ぴゅーって飛べて、むちゃくちゃいい気分だよ
どうも目も耳もよくなったみたいで、注意して視たい聴きたいとこを意識すると、全部わかっちゃう

そうなんだ、空から見下ろすと、この町の小ささが分かるね
とりあえずアパートに戻って、この先の人生でも考えよ、ってご機嫌中の俺ってわけ
posted by Beeまたの名は熟年のK at 13:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年03月03日

花粉症

はっくしょーん
特大のくしゃみが出た

もうアノ時期か
俺は気持ちが暗くなった

さっき洗濯物を干すのに
ちょっと窓を開けたらこれだ

それでも、出勤の時刻は徐々に迫っている
ダイニングの椅子から立ち上がりかけたその時

テレビの中の新人アナウンサーが次のニュースを読み上げ始め
俺はテロップの『花粉の少ないスギの苗が増えている』に動きを止めた

なんでも、花粉の非常に少ない品種改良したスギ苗が、全国的に植えられているらしい
だが、まだ日本の杉の木の、ほんの0.何パーセントらしい

なんだ、花粉症に悩まされなくなるのは、ずっと先のことじゃないかと
それでも、微かな未来の希望に、ちょっぴり明るくなった俺は、元気を取り戻して家を出た

*
*
*

月の裏側にひっそり駐在しているアルファケンタリウス星人のαとβが、研究成果を持ち寄って
1万地球時間ぶりの休憩時間を利用して意見交換をしている

〈君の担当案件の成果が出始めているようだね〉
《ありがとう、あなたの方もやっと順調に推移し始めているようじゃないの》

〈そう、この調子なら7休憩から8休憩くらいのうちにカタストロフィー惹起が来るかも〉
《そんなには早くないでしょうけど、でも順調にいっているわね》

αが担当している処置作業は、この衛星の主星に猛繁殖している種の繁殖意欲を低下させること
βの担当研究は、主星に繁殖した種の個々に、自分第一の観念を高じさせること

〈そうなんだ、やっと♀体に♂体への求愛行動がつまらないことだと気付かせ
♂体に♀体を守ることの価値観を、疑問視させることに成功し始めたんだ〉

《私の方も彼らの行動原理の根幹に、自分大事を教え込むことに成功できたから
この先、他者と連動して思わぬ方向に暴走するこの種族の特性を、矯正できつつあるわ》

〈文明が先進している地域では、新たな繁殖はかなりセーブされ始めている、と報告しよう〉
《私の担当分野は、地域、性別、生存年数に関わりなく効果を発揮し始めているから、この先が楽しみ》

やがて休憩時間が終わり、2体はそれぞれの研究棟に戻って行く
この衛星の主星「地球」に繁殖している迷惑な種族の増殖が止まってくれることを願いながら
posted by Beeまたの名は熟年のK at 11:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2018年11月27日

良縁を望む

「だから私はこのΛ2AIを造ったのだ。ちなみにΛはVの逆だ」
取材に伺った先の、T大教授K氏はそう吠えた

「放っておいたら、いずれ我々人類は、最終的にはあのスーパーAIに排除されてしまうのだ」
そうだ、あのAIに人類の未来を託すというAI SAVE HUMAN計画が発表されたのは10年前

選挙民のことも国民のことも考えない政治屋どもに愛想を尽かした“良心的な”政治家連中が
IT企業と結託して2050年の大崩壊問題に対処しようとしていた

そのことはIT企業に利用されている各国要人というタイトルでマスコミやネトコミを賑わしていたが
次第に高まる自然環境崩壊と水資源危機、難民大量移動という事態の解決の願いに肯定化され

世界を連結させたスーパークラウドAI“ASHN”計画はスタートしたのだった
一旦スタートしたその計画が、驚くほど順調に進展したのは、既にIT企業連合が完成させていたAIの

プレASHNが能力を発揮したからだと云われている
世界に広がっていたIT企業連合が利害関係をうまく擦り合わせることができたのもその力らしい

結果、世界の人類が“公平”に“無理なく”発展できることを推進できる能力を備えたスーパーAIは完成した
その後の展開は読者もご承知の通り、地球資源の無節操な搾取はなくなり

あれほど各国政府を悩ませていた難民問題も、その根源である民族と宗教の問題を解決したことでほぼ解消
(まさかそこにこだわる人間を分離移住させてしまうとは!)

昨年施行された『自由恋愛法』も、婚姻という社会契約を重んじない連中には受けたが
生まれた子供は育児AIが育てるという(会いたくなったら会えるそうだが…)システムが不安を生む

そんな世相を切り取ってネットにあげていた我々ネトコミも、異論を唱えようにも
すぐに反応して反論してくるスーパーAIの完璧な論理に、言い負かされてしまうというのが現状

K教授に出会ったのも、ネトコミ仲間と昔ながらのグチリ酒場で合ったとき聞き及んだ先月のこと
教授の鋭い舌鋒によると、スーパーAIはあまりに論理的に大崩壊問題を避ける方法を優先するようにした為

既にIT企業連合の支配を脱し、スーパーAIの思考に合う人類を救うべく精力的に(ここで教授は笑った)
仕事をこなしていて、情報・エネルギー供給・食糧生産管理を掌握してしまっているスーパーAIは

もはや軍隊だろうが、大金持ちであろうが、スーパーシンクタンクであろうが敵ではないらしい
「しかし、超天才の私には秘策があるのだよ」と教授が微笑んだのは1週間前のこと

今日、こうしてK教授に会う前に、これまで人類の英知が抗って計画したスーパーAI能力ダウン計画は
ことごとく事前に発覚(そりゃそうだろう、全てのコンピュータはスーパーAIの管轄下だもんな)

全て骨抜きにされるか、予期せぬ事故が発生してとん挫していることは、私でも知っていることだ
それでもやれる秘策とは、なんだ?

「さあ、出来た」K教授はにっこりほほ笑むと、机の上の時代物のibookのスタートをオンする
別になにも起きない

「もう君に教えてもいいだろう。今、女性AIが誕生したんだよ」
はあ?なんですか、それ、と訊きたいところをぐっと押さえて「女性AI、ですか」と聞き返す

「今稼働しているスーパーAIは、あまりに論理的に問題解決を図ろうとしてるだろう」
そこが問題なのだ。ゴールが2050年に設定されているため、命題の解析が最優先され過ぎているのだ

「そこにこの女性AIの情緒優先傾向と、直観洞察能力、矛盾包括能力を干渉させるのだ」
そんなこと、すぐにスーパーAIに排除されるんじゃ…

「その自分に無い不確かな存在が気になって、彼、あえて彼と呼ぶのだが、彼は惹かれるのだよ」
つまり、結婚、みたいなことか。そうか影響は与えるだろうな、いい方向だけなら良いのだが…
posted by Beeまたの名は熟年のK at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2018年10月07日

憩いの部屋

昔の人が“働き方改革”という制度を作ってくれたおかげで
この国では定時になれば自分の部屋に帰ることができる

お隣の国やその又お隣の国では
競争が激しくて一日15時間や16時間くらい働いているという

逸朗は部屋に入るとAIのナシュカに声を掛ける
「ただいま〜、腹減ってる〜」

部屋の真ん中がぽっと光り、ナシュカの姿が浮き上がる
『お帰りなさい逸朗さん、貯蔵庫にお夕食が届いているから、それを食べてね』

設定を10代後半にしたのは、逸朗の好みだからだ
この設定で、10%増しの月額利用料を支払っているが、好みなんだから仕方がない

貯蔵庫の操作光点に触れると、逸朗の健康状態と今日の働き方度に応じて用意された夕食が現れる
もっと高価な部屋AIなら、アンドロイドみたいなのが出て来て、給仕してくれるらしいのだが

夕食を食べ始めると、部屋の壁の前に3Dニュース画面が浮かび上がる
ナシュカは逸朗の隣りで一緒にそれを観ている風だ

夕食を食べ終え、通勤スーツをワンタッチで脱いで部屋の隅に立つと
温水、洗浄液、温水、撹拌、温水と進み、最後に温風が出て、すっきりする

その間、ナシュカは部屋の反対側にいて、ときどきちらちら逸朗を見ている風
(この追加動作は、導入記念割引で直電子マネーで購入したものだ)

もう2段階高価なタイプを選んでいれば、ナシュカをもう少し楽しめるのだが
あと150ポイントは貯めないと、それは望めない

それでも眠くなってきたので、ナシュカに声で伝えると、コクーンが壁から現れる
コクーンに滑り込む前に、今夜のオーダーを設定する

このところ仕事に張りを見出せなくなりつつある自分に、一番効き目のありそうなドリームを選び
コクーンに埋没する

今の仕事処の上司もAIで、人間の上司を選ぶことも出来たのだが
先輩や学友のほとんどが、AI上司の方がいいぞ、と勧めたのでそうしたのだ

見落としなく仕事の指示をしてくるが、変に気分や出世の道具として接する人間上司より良かった
と、ずっと思っている

この後、逸朗はナシュカと一緒に、あの大草原の丸太小屋に戻れるのが分かっているので
それだけでわくわくしてくる

これなら、脳内エネルギーチャージも順調に進むだろう
posted by Beeまたの名は熟年のK at 17:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2018年06月15日

それでか

とあるバーのカウンター席で
青年Aが友人のBに話しかける

「だから、女は謎なんだよ」
「そうそう、女は謎だなぁ」

「喜ぶと思ったんだ。だのに、怒って出て行ったんだ」
「そうそう、女は謎なんだよ」

「放り出したんだ、僕が苦労して作ってあげたプレゼントを」
「そうそう、女にはそういうとこあるんだよなぁ」

「絶対喜ぶと思ったんだ」
「そうそう、喜ぶかと思うと不機嫌になる。女っていつもそうなんだよなぁ」

「やっと発明できたやつだったんだ」
「そうそう、かかった時間が問題なんじゃないんだなぁ、女には」

「性能はまずまずだったんだが、部分しかカバーできないんだ、まだ」
「そうそう、部分にこだわるくせに、全体のバランスが、とか言い出すんだなぁ」

「ちょっと小型すぎたかなぁ…」
「そうそう、いや、でも小型でも大したもんじゃないか、君の言う通りのものなら」

青年Aは、ポケットから銀色に光る電動シェーバのようなものを取り出して、改めて眺める
友人Bが興味津々で、それを眺める

スイッチを入れるとブーンと微かな響き
丸くなっている方の先端が青白く光り始める

つまみのゆで卵にその光を当てると…なにも起こらない…
ように見えた卵を手に取って、皿にコツコツと当てると、生卵がどろりと皿にこぼれる

「これがタイムマシン効果か!?」友人Bがうめき声を出し
青年Aがうなづく

「そうか、これを彼女にあげて、君は何て言ったんだ」
「顔でもお腹にでも、使えるよ、って…」漏れ聞いていたバーテンと友人Bが、大きくうなづいた
posted by Beeまたの名は熟年のK at 11:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2018年03月04日

第13星系区管理官 ジュブブ モノローグ02 「金(キン カネ)」

この惑星の支配種“人類”は
視覚という極狭い範囲の光スペクトルに拘泥する傾向がきわめて強い

前回述べた“恋”という遺伝子混合をする為の前段階においても
“視覚”がトリガーファクターになるが(このことは別の機会に記す)

今回のテーマである“金(カネ)”という概念を重視しているが
もともとは“金(キン)”という限られた用途の鉱物の色(反射波)を好む性癖が発端になっている

“人類”はこの惑星上に拡散する過程で互いに助け合うことが必要なことを覚え
遠隔地に住む者同士が必要とする物を交換できるように“金(キン)”を仲介価値とし

さらに持ち運びに便利なように“金(カネ)”という“金(キン)”の代用価値を創造している

このことは“人類”の増殖に大いに役立ったが
じきに自分及び増殖の過程で生じた“家族”の将来の保証として現在必要としている以上の物を蓄え

さらにそのことから交換できる価値“金(カネ)”を集めることに関心が移った

最初は見える範囲で量的に物や“金(カネ)”が多く集まっていれば満足していたのだが
“金(カネ)”を手元に置くことに不安を抱き“金(カネ)”を預かったりその“金(カネ)”を貸す考えが生じた

また物や“金(カネ)”を管理するためにも“数”という概念で処理する必要があり
やがてこの惑星の“人類”は“数”が多く表記されることに価値を見い出すことになった

おかげで今やこの惑星の“人類”は“数”を常に意識し生物としての必要を全く無視した生き方
“経済活動”に縛られて全体から見れば極一部の者が他の多くの者達を圧迫している状況だ

なぜこの生き方が覆されないのかが謎だが“いつかは”という概念が
この惑星の“人類”の生存する上での行動基準になっていることが主因なのかと官は推論する
posted by Beeまたの名は熟年のK at 11:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2018年02月08日

第13星系区管理官 ジュブブ モノローグ01

この星系に赴任して100公転周期を経た
一定の文明レベルに達したこの惑星の支配種族が

第077宇宙の一員に迎えられるかの最終審査の審査官として
官は多くの複数課題案件を抱え多少混乱していることを認めざるを得ない状況にある

この惑星の生命体の多くの進化手法は
疑似分裂と融合を繰り返す“分裂融合型”増殖によって時間分子変化を行っている

具体的には遺伝子割譲体と遺伝子受容体の2種の交配による増殖が高等生命体の主流を成している
さらにこれまで最高等生命体(彼らは自らを人類と称する)においては

この増殖法を積極肯定する行動指針を執りその行動総称を“恋”と呼び
その状態から派生する同胞関係第一主義を“愛”と称している

“恋”の時間的維持期間は短い(なかには1公転周期を待たないものもある)が
“愛”という感情浸食期間はまことに不規則で瞬間的なものから生命体消滅まで維持する場合もある

我々のような“純融合型”進化生命体においては理解困難なこの惑星の最高等生命体(以下人類)の
まことに珍奇な行動データを記録し後任の円滑な状況理解に寄与したいと結論し記すものである
posted by Beeまたの名は熟年のK at 13:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2017年07月24日

愛こそ全て

2088年7月24日
極東の寂れた国の空港に私は降り立った

20年代をピークに
この国は徐々に衰退し

50年代に入ると
様々な天災に見舞われたこともあり

この国は世界の表舞台から
静かに退場していった

大した資源もなく
かつての繊細な感性を活かした様々な工業製品製造能力も衰え

ここの政府の言うところによる
inkyo−Lifeに入ったこの国は

世界の喧騒から一歩も二歩も離れて
静かに黄昏の時間を過ごしている

『祝平成百年』と書かれたタペストリーが下がる人影の少ない空港で
簡便な入国審査を受けた後

空港からタクシーに乗った私は
運転手が人間でないことに降りるその瞬間まで気付かなかった

Yadoと呼ぶホテルのフロントの
気の利いたスタッフもNakaiという女性スタッフも皆

気を付けて観察してみると人間ではないようだ
商談相手と会う約束のSusiyaでも従業員は皆

精巧なロボットのように見える
そのことを商談相手のミスターKに言うと

彼は穏やかに微笑みながらうなづき
「よく出来ているでしょう」と言った

なんでもこの国では
手間のかかることは全てAIロボットに任せていると言う

それで皆さんは平気なんですか
と訊ねると

「そんなこと誰も気にしてませんよ」と言う
とにかく50年代の連続大天災の危機を

AIロボットと共に乗り切ったことで
国民とAIロボットの間に信頼が通い合ったのだという

思えばこの国の先祖たちも
従順に天災を受け入れ権力を受け入れ

個々よりも家族を地域を優先してきた歴史がある
私たちは個人の幸せを追求することを最優先して繁栄してきたが

気遣いがあり柔和で活力のあるAIロボットと
穏やかで静かな人々とが混在しているこの国の醸し出している安息感は

もしかすると天国という場所に一番近いのかも知れない
大体世界のほとんどの国々が

人類対AIという対決構造に陥っている現代では
あらゆる仕事を奪いそうなAIとそれに反発する下層人民との間を調整している

私たち支配階級という三極対立に異なる宗教観が複雑にからんで
常に緊張を強いられているのが現状だ

その緊張感こそが生きている証だとわが身を慰めている現状
科学進歩が停滞し経済が低迷し貧困との戦いに明け暮れている現状

恐らくこの国がそんな過酷な世界情勢の中で
この安息感に浸っていられるのは

世界の政治家や投資家
革命家や犯罪者に至るまで

AIロボットとの共生を果たしているこの空気感を
未来への最後の救いとして残しておきたいと考えたからだろう

そんな私の感慨をミスターKに話すと
彼はこう言った

「そうですねえ。もともとAIと言うのは
我が国の言葉では“愛”とも読めますからねぇ」
posted by Beeまたの名は熟年のK at 15:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説