2020年08月23日

3つの願いの3番目

昨日は瞬間移動の能力を試した後、いつものようにコンビニバイトで忙しかった一日だった
今日は遅番なんで、いよいよ3番目の能力“未来受感”を試してみようと思う

大体、なんで未来“予知”、とか未来“透視”じゃなくて“受感”なんだ?
“受感”が、感を受ける、だったら、どんな“感”が来るんだろう

その前に、未来を受感できる能力って、いつ、どんな時にどうやって発動するんだ
取説の無い超能力って、扱いが困るんだよなぁ

とりあえず僕は、数字を予想する宝くじのことを思い浮かべてみた
もちろんなにも起こらないので、1〜43までの数字6個の組み合わせを想像してみた

が、別になんにも…だった
そりゃ、考えれば数字は浮かぶけど、確定感がないんだよね

一応、思いついた数字はメモっといて
もっと漠然とした、今日この後、なにか起こるか、それが知りたい、と呟いてみた

呟き終わったとたん、軽く胸やけみたいなのが喉元にこみ上げるような気がした
ただそれはすぐに消えてしまい、印象に残るまではいかなかった

それから、今のコンビニバイトを辞めて、前にコンビニに居た先輩が誘ってくれた
焼肉屋のバイトに転職した方がいいか、その答えを求めると、急に胃が重い感じになった

どうも、こうだという未来が感じられないので、いつもの近所のコンビニ(バイト先じゃない)で
缶ビールとつまみを買うつもりで外に出た

コンビニが見える辺りまで来たら、頭が痛くなってきた
こりゃ風邪薬も買った方がいいかなと思いながら、歩き続けると、頭がどんどん痛くなって来る

立ち止まって、両ひざに手をついた格好で頭痛に耐えながら、コンビニの店内を見ると
なにやら雰囲気が変なのに気付いた

どうも黒服のひょろっとした奴が、なじみのオーナーおじさんになんかクレームつけてる風
オーナーおじさん、困ってる、って見えたが、レジ開けてお金を差し出してるみたい

ええっ、あれってコンビニ強盗かも!
そう思ってみると、出した出した、包丁みたいな白く光るヤツ

警察に連絡して、パトカーが来たら、強盗は逃げて、お巡りさんが追っかけて
見てる方はおもしろかったけど、考えてみると危ないとこだったんだよね

巻き込まれてたら、怪我してたかも知れん
そうか、頭痛くなったのって、こんな未来が感じられたってことかも

じゃあ、バイト転職も、いいことないってお告げなのかな
宝くじも、当らない未来だってこと!?

う〜ん、この能力って、役に立つのかなぁ…
posted by Beeまたの名は熟年のK at 14:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2020年08月17日

3つの願いの2番目

とりあえず、カラスと話が出来そうなことは分かったので、それは置いといて
次に試してみたいのは瞬間移動かな

…ということで翌朝、僕はバイトに出かける用意をして、マンション・ウイングの2階通路に出た
一瞬で僕が姿を消すところを、近所の連中に見られないように周りに気配りして、試してみた

行き先はここから見えるバス停だ
およそ5〜600m先といったところにある

バスの時刻に合わせて走ると、ちょっときつい距離だ
で、気付いた、どうやればいいの?

まず、念じてみることにした
『あの見えているバス停に行きたい』と

全然、動かない、移動しない、2階の通路に立ったままの僕
「あそこに行く!」声に出して、心を込めてバス停を凝視してみた…全然、だ

ふと思い出した
あの小人、確か、非常に短時間に、見えてる場所に、体を移動させる能力、って言ってた

非常に短時間に体が移動するんだ
ってことは、もしかすると…

僕は今居る場所かららせん階段を駆け下りて、下の道を通ってバス停に行くコースを思い浮かべた
と、僕はバス停前に立っていた

非常に素早く移動したようだが、別に息も切れてないし、足もよれてない
階段も踏み外すことなく、無事ここに立ってる訳だ

なるほど、と思わず独りごちた僕
もう一度やってみて、僕の推理を検証しようと思い、次の行き先を探した

ほぼ直線の道路の向こうに信号機が3つ数えられる
3つ目の信号機の辺りにコンビニの看板が見える

一直線なんで、この道を行ってコンビニ、って思った瞬間、コンビニの駐車場に立ってた
ちょうど、入って来た軽自動車があせってハンドルを切った

なんとか無事止まった軽自動車のドアが開いて、年配の男の人が驚いた顔して降りて来た
僕はそれについてなんの反応もしないようにして、店内に歩いて入った

いつも立ち寄る雑誌コーナーに立って、店外に視線をやりながら、次の移動先を探した
つまり、ここから見た場所へのコースには、コンビニの自動ドアがあるという設定だ

マズると、一瞬後にドアにぶつかって、どうにかなってる可能性がある
やってみたくはなかったけど、今後のために試すべきと結論して、道路の反対側の自転車屋を見た

その瞬間、自転車屋の店頭に立っていた
沢山並んでいる自転車にぶつかりもせず…ということは慣性の法則は無視なんだ

一瞬で姿を消した僕を、もしかするとコンビニの監視カメラが記録したかも知れないけど
別に、万引きしたわけでもないし、まあ問題ないだろう、と自分に言い聞かせた

ここで結論
ちょっとした犯罪に使えそうだけど、僕はそんなこと興味ないので、役に立つことないかもね
posted by Beeまたの名は熟年のK at 15:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2020年08月09日

3つの願いの1番目

僕は小人が約束してくれた3つの願いが本当に叶うのか確かめたくって仕方なかった

夜が明けて(スマホの時刻表示は06:07 8月9日 日曜日
日曜日かつ夏休みなのに目が覚めちまったんである

マンションとは名ばかりの、実家の母ちゃんからは一部屋アパートと呼ばれているマイホームの
窓を開ければ裏の畑に降臨しているいつもの連中が何羽も見える

その黒い連中の一羽に的を絞って(こっちに来い)と念じてみた
〈なんだよ、なんか用か、飛べない奴〉…なんとすぐに意思が通じたんだよ

(分かるのかオマエ)と念じてみた
〈うるさいな、なんだよ、食べ物でもくれるんか〉…なんて明確な思考だ

カラスがこんなにはっきり考えて喋る(いやテレパシーかな)なんて思ってなかったんで
こっちに来てもらってなにしてもらいたいのか考えてなかった僕はどぎまぎして後が続かない

〈用がないなら呼ぶな、じゃあな〉…少し落ち着いたのでテレパシーが来るときカアカア鳴いてるのが分かった
…ってことは、テレパシーじゃなくって鳴き声翻訳??

カラスじゃない動物の思考も分かるのか気になったので探してみたがほかに目に付く奴はいない
畑の中には虫とかカエルとかもいるだろうがなんにもわからない

どうやら見えててこっちの神経が集中してるときに分かるのかなと一応頭の中でメモった
トースト食べて牛乳飲んでスマホのニュースとラインとメールと天気予報をチェックしてから自転車で出た

行き先は5qくらい離れてるこども公園だ
きっといろいろ動物がいたはずだから

こども公園はもう家族連れがマイカーで結構来ていて人がかなり多かった
休みだし遠隔地への旅行はなんとなく行きにくい世相だってことでみんなここに来るしかないんだろう

自転車を桜の木(春咲いてたので僕が判る木だ)の横に盗難防止チェーン施錠して停めて園内へ
最初の「アヒル池」で動物が何種類かいたんで早速通話を試みた

カメ、は(う〜)みたいな反応してすぐ潜ってしまった
僕は(もしもしカメカメ)って話しかけたんだけど

アヒルは何羽もいたんでこいつと的を絞って(おーいこっちにおいで)と呼びかけた
〈なんだエサくれるんか〉と返って来たがすぐ周りのアヒルたちも〈エサ〉〈エサ〉〈くれ〉〈くれ〉

ってなってやかましいし、エサもなかったんで放っといてその場を去った
その後スズメやカモ、ハクチョウなんかに声かけてみたがどうも返事が単純、しかも〈エサ、くれ〉しかない

ほかのヤギやヒツジやウサギなんかにも声(というか念)をかけたみたがみんな基本的に〈エサくれ〉だ
で、犬連れて散歩の人のイヌに声かけたら〈怪しい奴、あっち行け〉と来た

別のちっちゃいワンコに声かけたら〈怪しい怪しい寄るな寄るな〉だ
犬は警戒心が強いのかご主人と一緒だと、めっちゃ警戒する(普段は手を出すとくんくんするのに)んだ

いろいろ声かけて(人間にもやってみたが無反応だった)単純に飼われてる奴、可愛がってもらってる奴
自然界にいる奴で対応が違う(大きさも関係あるかも)のがわかった

だから何の役に立つかもわからないけど、カラスが一番話せるってことがわかった一日になったんである
posted by Beeまたの名は熟年のK at 17:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2020年08月05日

彼岸

鳥の鳴き交わす声で目が覚めた
隣りの寝床を見ると妻はもう起きているようだ

下に降りて行くと妻がダイニングで簡単な朝食を摂っている
私はトイレで用を済ませた後、仏間で朝のご挨拶をしてダイニングに戻る

「おはよう」と声をかけ自分の椅子に座る
妻は「おはよう」と言うと、パンの袋と冷蔵庫からマーガリンと牛乳を出してテーブルに置く

パンをトースターに入れ私のマグカップに牛乳を満たしてパンが焼き上がるのを待つ
「今度の土曜、あの子たちにテレビ電話しましょうか」妻がぽつっと喋る

「うん、いいね。しばらく電話してないからかけよう。じゃあ明日はこの辺り少し片付けるか」
これで、明日と明後日の予定ができた

テレビの中では相変わらずのニュースとニュース解説だ
録画しておいた連ドラの再々放送を観る方がよっぽど良さそうだ

「〇哉も〇未も随分大きくなったよな。この間のテレビ電話なんか、英語で挨拶してたしなぁ」
「わたしはなに言ってるんだか、わからなくって…。でも〇哉ったら絵が上手なのよねぇ」

孫にも息子夫婦にも、もう何年会えてないんだろう
それを口に出すと、妻が寂しがるからうっかり口にできない

ダイニングの窓から見える庭のデュランタの花の向こうを、近所の中学の子らが通って行く
中学生の活気と悩みと興奮を纏った喋り声が、一時大きくやがて徐々に小さくなって過ぎていく

夏休みが近付いても、我が家に子どもの活気が戻らなくなって随分たつ
テレビ電話の中の子は、段々見知らぬ表情をし始め、身体の重さは感じさせてくれない

穏やかなこの家の暮らしに、また楽しい波紋が広がる日はいつ来るのか、もう来ないのか

あの病災以来、年寄りだけに死の危険をもたらすウイルスの蔓延のおかげで
子にも孫にも会えなくなった我々世代を、若い人たちは“彼岸の人”と陰で呼んでいるとか

普通に暮らしている限り、大体なんでも揃っているこの生活は、確かに昔の人の夢見た極楽世界
この家に暮らしている私たちこそ、いつのまにか彼岸に送り込まれているようなものかも…
posted by Beeまたの名は熟年のK at 11:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2020年07月11日

3つの願い

電気街に行くと楽しいことがある
ジャンク品の中に、たま〜に掘り出し物があるんだ

その日、店の隅っこで、ごちゃごちゃがらがら箱に入った電気部材を掻き廻していると
古いモーター用永久磁石にくっついていた7×3Cmくらいの楕円形の金属容器が僕の興味を惹いた

引っぺがそうとしたがびくともしない
だが僕は慌てずに容器を横に擦るように滑らせた

こうすれば強力な磁力で吸いつけられている物も簡単に外せることを知っているから
ということで、こすりながら滑らした金属容器が僕の手に収まったタイミングで

滑らかな容器の一部に、すっと円形の線が現れ、それが開いた
なにか壊したかと、どっきりしたが、まあジャンク品150〜550円の品物だから構わないか

と、思ったその時、丸く開いた中から、小さなクリーム色の煙が立ち上った
えっ、なにか発火させてしまったか、とどっきりした瞬間、煙の中から小人が現れたのだ

なにやらチーチーいう音がした後、山から下りてきた後、耳栓が取れたみたいに耳がすっきりして
『どう、ですか、ワタシの声、聴こえてますか?』と、やけに甲高いきんきん声が、はっきり耳に飛び込んで来た

えっ、こいつ?この小人が喋ってんの?と、思ったら
『そうです、ワタシ、貴方に、空気振動で、意思伝達して、ます』って、応答があった

なんだなんだ、ランプの小人か?って、思ったら
『まあ、そんなものだと、お考え頂いて、よろしい、です』って、また応答

ちょうど、店の奥だし、店員の姿はこっちから見えてないし、万引き防止カメラはあっち向いてるし
僕が小人の話、聞いてるなんて誰も思いやしないだろう

で、こっちから「なんだ、なんか用か」って、話そうと思ったら
『いえ、空気振動は、おやめ下さい、ワタシの、振動制御機能は、調子悪い、ので』と、すかさず応答が来た

おお、テレパシーってやつか、と思ったら
『まあ、そんな、もんです。それより、先ほどは、まことに、ありがとう、ございました』

そうか、小人の乗り物かなんかが、磁石にくっついて困ってたんだな、ってSFチックに思った
『まあ、そんなところ、でして。で、ワタシのタイムスライサーを、解放して頂いた、お礼、なんですが』

ほうほう、お礼か、さしづめ、ランプの精ってとこだな
『それは知りませんが、困っているところを、助けて頂いた、ので、ワタシとしては、なにか報いたいと』

じゃあ、3つの願いかなんか、叶えてくれるのかな
『あ、それで良いなら、そうさせて頂きますが、ワタシに、出来る範囲に、なりますけど、良いですか?』

出来る範囲ってのが、気になるが、どっちみち出来ないことは、出来る訳ないし
『その通り、です。…では、どうぞ』

ってたって、そうそう3つの願いなんて、日頃考えてる訳もないけど、まあ、お金にしとくか
『お金、ってあれですね、この惑星人が好きな、自分たちだけで勝手に作った、資源分譲システムですね』

そう言うのか。してみると、こいつは異星人、って訳か
『その質問にはお答えでき兼ね、ます。また、お金を作成することは可能、ですが、この惑星では、犯罪に…』

そうか、こいつが持ってる訳ないし、どっかから盗って来られたら、大変だしなあ
『結論を申し上げますると、出来るのは、貴方さまの遺伝子に作用して、この惑星で便利になる、能力を…』

そうかそうか、超能力みたいなもんを、授けてくれるって、そういうことなんだな
『う〜ん、まあ、そんな、ところ、でしょう、かねぇ』なんだか歯切れが悪い応答になったのが、気になるぞ

で、どんな能力をもらえるのかな
『精神感応、未来受感、念動力、空間移動、念発火、瞬間移動、他者誘導、小集団催眠、他種伝達、物体透視、って、こんなとこでしょうか』

未来受感って、未来が見えるってこと?
『いいえ、未来が感じられる能力、です』

なんか、曖昧な能力だなぁ
『貴方たちの基礎脳力からすると、その辺りまでしか操作できないんですよ』申し訳なさそうではあるが

じゃあ、空間移動ってのも、どこにでも行ける、って訳じゃないとか
『そりゃまあ、基礎脳力次第って、ことになって、しまいます、ね』

瞬間移動、って空間移動と、違うものなの
『非常に短時間に、見えている別の場所に、体を移動させる能力、になります』

とにかく、どの能力にしても、それなりの範囲があるってことになるの?
『まあ、基礎脳力次第、で、ございます、ねぇ』

まあ、いいや、僕だって、そんな大したことしてないし、貴方の気持ち次第なんだから、お礼なんて
『いやぁ、そうおっしゃられると、ワタシも辛いのですが。どうでしょう、この惑星で、効果のありそうなのを、ワタシの方で、お見つくろいさせて、頂き、ましょうか』

折角の3つの願いを、人任せにするのもなんだかなあ
『では、貴方さまが3つお選びください』ちょっとだけ、むっとした感が漂った応答

その10個のほかには、もう無いの?
『この惑星の人類の、脳力、からすると…』

そうか、わかった。じゃあ、最後にもう少し、質問させて
『はい、結構ですよ、どうぞ』

他者誘導って、他人の考えを誘導、って言うか、変えられるってことだよね。じゃあ、他種伝達って?
『いい質問ですね。他者誘導については、ほぼその通りです。他種伝達は人類以外の生物に、意思を伝える能力のことです』

人間に意思を伝えることは出来ないの?精神感応が、そうなの?
『人間に直接意思を伝えると、その違和感でほぼ反発しますので、人にやってもらいたいことがある場合は、対象の元々の考えとして、こちらの意思を反映させます。精神感応は、他人の考えを感じることです』

なるほど。では最後にひとつ。念動力も、そんなに大きいものとか、重いものは動かせない?
『基礎脳力次第、ですね。もうよろしいでしょうか?』ついに、いらいらし始めたかな

では、次の3つ、お願いします。まず、未来受感なんだけど、それ、しょっちゅう感じるの?それとも、未来を感じたいときにだけ、発動するの?
『おお、なかなか的確なご指摘ですね。それは後者です、とお答えして、発動を承りました』

う〜ん、もう発注になったのか。じゃ2番目、瞬間移動。3番は、他種伝達にしとこうかな
『はい、承りました。明日、自転して主恒星光が大気中に伝播しましたら、3つの能力をご確認ください』

はい、明日の朝ってことですね。それぞれの能力については
『基礎脳力、次第、ということになりますね。では、ありがとうござい、ました。では、失礼します』

と言ったかと思うと、金属容器も小人も消えてしまい、なんだか白日夢を見てたのかって、ぼんやり思ってる僕がぽつんと立っているだけだった
posted by Beeまたの名は熟年のK at 17:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2020年06月21日

スーパーマンレポート〜1公転時

ケントがこの惑星に来てからやっと1公転経った
着任する前は、上司からいい話ばかり聞かされていたので、期待して来たのだが実はひどい星だった

なにしろ同種同士のいさかいが多い種族で、知能を有する種族としては例外的な存在だ
危機に陥っているときに助けると、大いに喜ぶのだがそれが長続きしない

助けてほしい時に、助けに行けなかったりすると
ケントを非難するのだ

この星の種族に人気のある、植物を加工して絵や文字を刻したマンガとか
白い背景に光を当て、腕力で物事を片付けるヒーローが活躍するムービーというものがあるのに、だ

ケントが本当にそれをやると、必ず大問題としてニュースで取り上げられるのだ
それがほとんど非難に満ちたもので、もう少し周囲に配慮して行動しろ、という論調だ

そもそも、危機は突然起きるものだし、発生する場所だって、あっちだったりこっちだったり
時間帯によっては、人が多かったり、すぐ集まってくる野次馬という奴が、邪魔するケースも多い

先日、市内パトロールで上空1000mあたりを周回していたときに、突然の悲鳴を聴いて
5qほど離れた場所に急行(多分マッハ2〜3で)したら、ソニックブームで何十枚かガラスが割れ

落ちたガラスの破片で、十何人かが怪我をするは、びっくりした人が交通事故を起こすは
子どもを轢きそうになったタンクローリーをはねのけたら、ビルに突っ込んで大火災を起こすはで

ケント宛てに何十件もの損害請求が(もちろん素性は隠しているので)、市役所に送りつけられるはめになり
一時は警察から逮捕状が出たり(これは、掴まえるなら警察署をぶっ壊すと言ったら不問に)で散々だ

また、ある時は、市内の繁華街をデモ隊が占拠して、警察とにらみ合いになっていたんで、仲裁に出向くと
警察がデモ隊を排除しようと、催涙ガス弾を発射、デモ隊に巻き込まれたお年寄りを守ろうと

催涙ガス弾を片っ端から、投げ返したら、警察側が大混乱、おまけにデモ隊側に、商店を破壊して
店内の商品を持ちだす連中がいたので、その連中をまとめて動けなくしておいたら

翌日のテレビ、新聞、ネットニュースで、一番現場を混乱させたのはケントだ!と叩かれまくりだった
それもこれもこの惑星には、大怪獣の襲来とか、宇宙人の侵略なんてないので、敵は結局この星の人間になる

それが、大体“経済”という、この星の人間の生命活動そのものに、欠陥があって、善悪がないときてる
個体の生命活動維持に困っている人間は多いのに、その原因があいまいなので、当事者も理解できてない

一度、他所の言語圏に出向いて、“難民”と称されている“困っている人々”を助けてやろうとしたときも
そこの政府という、自助団体から、どうか放っといてくれ、と抗議され、仕方なく見放したり

大きな河の上流域に、ダムというものを造って下流域の住民が困っていたので、取っ払ってやろうとしたら
上流域の政府という集団組織から、派遣された警察とか軍隊という集団が、原始的な衝撃武器で向かって来た

半分程度を壊滅させたが、更に大集団で向かって来るし、助けたつもりの下流域の政府も大弱りの体なので
こっちもやる気がなくなって、そのままにして引き揚げたら、今度は国連という集団の“決議”とやらで

“全人類の敵”とされちまった
別に困りはしないけど、当初の任務からすると、査定にマイナスなのはケントにも判った

任期はあと3公転残っているし、これまで任期半ばで交代した例は、僅少だと上司に注意されたので
やむなく国連本部なる建築物に出向いて、陳謝するはめになってしまった

とにかく、自分たちの諸問題を考えるとき、例の“経済”という観点が必須の惑星人類なので
前任者が困った挙句、なにもしないようにして4公転の任期を、ひたすら耐えた心境を改めて知った

いっそ、こんな惑星の人類なんて、どうなろうと銀河連盟が知ったこっちゃない、とも思うが
千公転、二千公転すれば、文明度も上がって、重要なメンバーになるというR05の説に反対もできない

ケントにしてみれば、この惑星の人類がときたま発揮する“愛情”という衝動なんて、持続性もないし
そもそも勘違いで生じているようにしか見えないけど、確かに高文明種族にはない資質だとは思う

残りの任期の3公転は、せいぜい、その“愛”という資質の研究でもしようかと、報告書に記すことにした
posted by Beeまたの名は熟年のK at 16:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2020年05月27日

お医者さまでも

F教授の宇宙ウイルスパンデミックスの警鐘は学会主流派の反発・誹謗中傷でかき消された

金星探査機ビーナス7はAIコントロールを駆使して予定通り地球に帰還を果たし
太平洋に着水したビーナス7はオーストラリア海軍が洋上で無事回収しシドニー港に帰投
金星から持ち帰った惑星地表の構成物の研究に科学者たちを筆頭に世界中の関心が集中した

…あれから7ヶ月
今や人類は存亡の危機を迎えていた

かく言う私も、どうやらあのウイルスに感染してしまったようで心臓の鼓動が早くなっている
研究リポートを打ち込んでいるPCの傍に、コーヒーカップを置いた助手のK子も
感染者特有の熱っぽい顔になっている

突然、K子が荒々しく私の首筋に唇を押し付けてきた
コーヒーカップがひっくり返り、熱いコーヒーがPCにかかった

完全隔離を目指して、郊外の研究室に籠っている私たち二人だけだから
助けも呼べず、また呼ぶ気など全く起きず、強く抱きしめ合うばかり

こんなにも愛おしいK子のことに今まで気付かなかったことが不思議だった
K子の方も、熱烈に私を求めているようで
互いに厳重に重ね着していた衣服をはぎ取り合いながら

もう後悔はないと、恋におぼれていくだけの自分をどこかで冷静に見ている目が…

感染者2名
重要研究者Y博士ト助手ノK子ガ激烈発症シマシタ
*
*
記録用AIが、どこかに報告をした

金星から持ち還られた資料の中に生きていたV-ウイルスは地球の高等生命体の息吹に触れ
猛スピードで増殖拡散していった

感染した者は、最初は異性に、やがては同性にも異種生物にも、果ては無機物にまで恋の対象を広げ
恋の熱く甘いるつぼに落ちていった

政治家も商人も法律家も教師も生徒も警官も消防士も科学者も評論家も経営者も農業従事者も
医師も看護師もマスコミ人もアイドルも性格俳優も、皆、年齢を問わず恋に落ち

生産、学術、経済、教育、交通、エネルギー、インフラシステムのあらゆる場所で
時を問わず恋に落ち、人類の活動は止まっていった

かろうじてAIの作動していた分野や、このV-ウイルスの脅威に気付いた医療関係者と
少数の科学者が自身を隔離してV-ウイルスの治療研究を進めたが

今や地球上のあらゆる場所に拡散したウイルスの浸食を食い止め得なかった

罹患者は、飲食も忘れて愛し合うため、平均72時間程度で死に至り
生き残ったもう一方も、数時間で亡くなった相手を追うように息絶えるのだった

南極基地の一室で、世界各地のAIからの報告を受けていたM博士はぼんやり呟いた
「お医者さまで〜も…♪」
posted by Beeまたの名は熟年のK at 16:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2020年02月16日

羽化の片影

カチャッ
玄関のドアの開く音

とんとんとん…
階段を上がる足音

どうやら娘が帰ったようだ
随分待たされた時間を笑い話にしたかったのに

足音だけがタダイマを告げて
娘は自分の部屋に行ってしまった

このところ
いやこの何年か

娘の勤め先の話も気になる人の話も映画の話も
なにも共有できない、なにも共鳴しない只の共同生活

朝食をそそくさと食べると会社に出かけてしまう
帰りは遅く夕食は滅多に一緒にできない

母親がいなくなったあと
高校生になった娘は私を励まそうと一生懸命だった

私も徐々に現実を受け入れ仕事に没頭するようになった
がそれに比例して娘との距離は広がり

親子なのだからと思う私と
親子なのにと思っていた娘は

同じ家に住まいながらなるべく相手の目を見ず
必要なことだけ伝言し冷えた食事に心を荒ませた

そして今夜必ず一緒に夕食しようというメールにほんのり心温まり
早めに仕事を切り上げて家に戻った私を待っていたのは伝言ボードの文字

先に食べていて下さいという文字の乱れに
心ざわつかせて待っていた私だが

足音だけの帰宅なんてと
急に怒りがこみあげ階段の下から怒鳴る私…に

娘の涙声の来ないでという返事
そして静けさ

言いようのない不安を感じつつ意固地に固まっている私
空虚に眺めていたテレビドラマが終わり

面白くないコメディアンのトークについに堪忍袋が裂け
階段を荒々しく上る私

ドアのノックの音が娘の部屋に吸い込まれ
静寂だけが跳ね返ってくる

ついに
怒り任せにドアを開ける

その部屋は
娘が小学校1年か2年生の時に入ったことがあるだけで

母親にも娘にも
絶対入らないでと云われていた部屋で

中はからっぽ
娘の姿は見えない

そのときベッドの上でふわりと動くもの
薄く白く透けている若い女の抜け殻

声を呑み息を忘れてそっと手にすると
ふぅっと一瞬輝いて…消えた

窓が開いていて風がそよりと入って
カーテンが揺れる

まさかと胸騒ぎで窓から庭を見下ろしても
ただ沈丁花が咲いているだけ

振り返りもしやと開けた衣装ダンスの中に
何十枚もの半透明の抜け殻が積り

小さなものは赤ん坊くらい
幼稚園に入って私の腕にぶら下がったくらいの大きさも

小学5年で県の美術展で金賞をもらった頃の大きさのもあり
高校生になって私に話しかけた頃の背丈のも

後は大人の大きさで多分大学の頃
多分入社したての頃

どれも
手に取るとふわぁぁっと光って消えてしまう

娘がどこかに行ってしまったことだけがなぜかわかった
茫然と見上げた窓の外を星が流れたのが見えた

*
*
*

[フェミアール881β 帰還シマシタ]

[了解 フェミアール881α トノユウゴウヲ許可スル]

[ムスメヨ オカエリ アノチキュウジンニ ワカレヲツゲラレマシタカ]

[ナニモイエズニ サッテキマシタ]

[ソウ モウカナシマズ ワタシニ融合ナサイ]

フェミアール881α ト881β ハ ユウゴウシテ元ノフェミアール881 ニモドッタ

posted by Beeまたの名は熟年のK at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2020年01月23日

3つの数字

マンモス、毛長サイ、ジャコウウシ…氷河期を生きた動物は
概して長毛に覆われている

が、俺は氷河期を生きたにも関わらず、そろそろ髪は薄めだ
まともな会社(とは上場企業のことか)の正社員にはなれずに

派遣やバイトの半年契約でやっている
やっと慣れた頃、次に行かされるためスキルも身につかない

そんな俺だが、先週見た夢で、妙にはっきり頭に残っていた3つの数字が気になり
通勤途上の宝くじ売り場で、その数字がらみでナンバーズとロトを買ってみた

結果、なんとひとつだけロト〇の末等が当たっていた
1000円が入るので(差引300円の赤字だが)同じ週の抽選日に合せて行こうと思った

すると、その抽選日の朝、またもやはっきりと3つの数字の夢を見た
で、今度は気合を込めて、その数字に思いついた3つの数字をからめて、5通り購入した

なんと、今週初めの当選番号を確認すると、5通り全部末等が当たっていた
計5000円!で4000円の儲けだ

そして、今朝もやっぱり3つの数字ご託宣があった
ここは考え物だ、と日頃慎重な俺は考えた

例え、1000円にしかならない当り番号でも、まとめれば大きくなる
で、どこまでまとめても大丈夫なのだろうか

仮に、3つの数字の夢が見られる間に、同じ数字を1000枚まとめ買いするなら
20万円とか用意できれば、200万円当たる訳だが…

以前読んだショートショートに、必ず宝くじに当たる男がその能力に振り回され
困る話があったが

やはり疑われるだろうな
となると一か所の宝くじ売場で、10枚程度にして

顔を覚えられない程度の間隔で5店くらいの店で買えば
1店1万円かける5で、5万円かける週2回かける4週

月収40万円以上になる!!
今の手取り月収の倍以上で、しかも無税!

俺は予定通り1日仕事を休んで、自転車に乗って宝くじ売り場を廻った
今夜の当選番号発表が楽しみでならない

でも、もしかして急に夢が変わったら…

地球から2億8千万q離れた、小惑星リュウグウと勝手に名付けられた岩塊のそばに
時空監視官のパトロール艇の中でクルル監視官が本部に報告を送った

『コノホシデオキタショウバクハツガゲンインノ ジクウヒズミノシュウフクカンリョウ
キインヨウソガメザシテイルワクセイニショウジタ ジカンリュウノイジョウモフクゲン
コレカラキトウシマス』
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2020年01月18日

お知らせ…「ランボー超人B」は短誕譚からスピンアウトしました

なんだか、どんどん長くなっていく「ランボー超人B」
これじゃ、ショートショートストーリー短誕譚には置いておけない

ということで、独立させました
バス旅天国では、別項目で出ております(ついでに、各段の統合もしてみました)

ぜひとも「ランボー超人B」の方もご愛顧を
それから、本来の姿に戻る「短誕譚」もよろしくお願い致します

作者よりのご案内でした♪
posted by Beeまたの名は熟年のK at 11:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説