2016年02月17日

無法の町

がたん、と車が揺れた
少し眠くなっていた俺の脳にアドレナリンが浸み渡る

最近は高速道路も地方に来ると路面の荒れが多い
俺の愛車H社製内燃機関タイプ2シーター軽スポーツカーの

サスペンションは大分へたっているので
こんなとき突き上げが厳しいのだ

それでも、おかげで下りるべきインターを
見逃さずに済んだってもんだ

この町のメインストリートは僅か数百メートル
なんてフレーズが頭に浮かんだ

俺って詩人か…
いや、どこかで昔聴いた歌だったかも知れない

そんな町の、薄汚れた「〇△」のロードサイド看板が
目に留まったので、愛車を駐車スペースに入れた

先客の軽トラックが1台と
傷だらけのワンボックスカーが停まっている

店のドア前で激しく手を動かすと
(動きに反応して)ゆっくりドアが開く

カウンターの中のオールドマンが
どこのどいつが入って来やがった、という顔でこっちを見る

先客の歳とった女が、両手に一杯持ったブツをカウンターに置く
オールドマンは「またあんたか、金は持ってるのか?」と言う

なんて店だ
客への礼儀がなってない

歳とった女は、ぶつぶつ言いながら首にかけている袋から
なにやらカードを取り出すとオールドマンにかざした

「また、これか。息子さん、わかってるんだな?」
歳とった女は、うんうんとうなづきながら

持って来た布の袋にブツを入れ始める
「待った、まだだ、チェックが済んじゃいない」

そう言ってオールドマンは布の袋からブツを出して
発光している機械の前を全て通してから、袋に入れ直した

俺はと言えば、少し喉が渇いたので
飲物の並んでいる台を探して店の奥に進む

どん、と肩と肩がぶつかる
はっと緊張して相手を見ると俺より大きな男だ

「あ、どうも…」と、思わず口から軽い詫びの言葉が出る
それもそうだ、相手がどう、と言うより、まず侘びるべきだ

それが他所者の礼儀ってもんだ
ところが、相手はそんな俺を無視したまま行っちまう

まあ、いいさ
俺は出来てる人間だから、こんなことでは怒らない

何種類かの飲物から
やっと、今の自分が欲している飲物を見つけ

オールドマンのところに行こうとした
ところが

さっきの大男がなにやら大きな声でがなっている
「おい、これ、こないだも古かったぞ!」

手にしたパンをオールドマンに見せつけている
「そうかね、じゃあ別のにしなよ」

「そうじゃない、いつも日付が古い、って言ってるんだ!」
「よ〜く日付を見てくれよ。ちゃんと見えてないんだろう」

なんて、言い方だ
あの店主は本当に無礼な口をきくもんだ

怒れたが、他所者の俺が首を突っ込んだってどうにもならない
さっさと勘定を済ませて、この店を出よう

怒った大男がカウンターを手のひらでばん、と叩いた
オールドマンがカウンターの下に手を伸ばす

こりゃやばい!
と、思った次の瞬間

どっかーん!がらがら、がっしゃーん!!と
店が揺れた

衝撃でふらついた俺の視界に
カウンターのところで青くなって立ち尽くしている2人と

店のガラスを突き破って
さっきのワンボックスカーの後部が見えた

ほこりが立ってよく見えないが
運転席に、さっきの歳とった女らしき人影がある

*
*

地方に来ると、どこもかしこも年寄だらけで
こんなことはしょっちゅうだ

警察が来るとあれやこれやうるさいから
さっさと俺は愛車に乗り込んだ

もう6回は車検を通した愛車は
最近では珍しいガソリンエンジン車だ

警察なんかに訊かれたら
息子夫婦に連絡されるに決まってる

折角、自由になったんだから
まだしばらくは旅を続けないと

おっと、飲物の代金を払うの忘れちまった
ま、いいか…
posted by Bee at 11:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2016年02月13日

独裁者 記録-4(一旦終)

その日、世界の人々はあの方の重要宣言の発表を
前日から大いに期待して待っておりました

宣言はいつも通りテレビでの発表です
一時期世界を覆っていたインターネットは

テレビの発表を追いかけ、個人的な解釈を披露するものになり
さらに活字媒体は、それらの早呑み込み情報を検証する媒体として

多面的に評価し、まとめた情報媒体として
特に、情報記録媒体的な性格を自覚した媒体になっています

そもそも、テレビ発表を最優先媒体としたあの方の方針が、様々な識者
マスコミ、政治家たちの、初期の批判的な意見から徐々に変わっていったのは

テレビという、家族単位を意識した情報媒体の持つ、複数の人間が同時に
ニュースに接し、意見交換を行える長所が認知されていったからなのでしょう

しかし、来訪1周年記念日のあの方のご意思の発表は、私たち地球に残った者と
後に「GATE」と呼ばれた百基の宇宙空間転移装置への道を選んだ人々にとって

文字通り、運命を分けるインパクトがありましたね

『お前たちに、わたしの熟考した第3のルールを伝えるにあたり、このルールが
唯一無二の結論であったことを理解することを望みます』

『第3のルールは、お前たちは信じる神を捨てなければならない、ということです』

『捨てる者はこの星で生活を続け、捨てがたい者たちは、それぞれのリーダーに従って
この星に似た環境の惑星または人工星への移住の道を選ぶことになります』

この国のように、さほど信心のなかった国ではそれほどの騒動にはならなかったのですが
信仰心の厚い国の皆さんは、大きく反発し、叶わぬまでもあの方に抵抗してみたものの

やがて、それぞれのリーダーの下に集まり、移住先の惑星や人工星の環境データが
判明するにつれ、終息し旅立っていったわけです

その結果、地球の人口は30億人を切り、世界は徐々に落ち着きを取り戻し
この星をあまり傷つけないよう、太陽エネルギーを活用したシステムが動き始めました

聞いた話では、それぞれ旅立った人々も似たようなシステムを構築しているといいます
自分たちの科学力で把握できた星の許容量の中で、円滑に生き始めたわけですね

さあ、そろそろ我が家のテレビタイム
家族が集まる時間なので、このへんで私の回想記録も一区切りとしましょう

そうそう、あの方はこの星を離れられましたが
私たちは皆、あの方を忘れることはないと書き添えておきましょう

明日は、あの方の記念像の除幕式があるので
忙しくなりそうですよ
posted by Bee at 15:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2016年02月10日

「熟年超人セカンドステージ」分離・独立のお知らせ

ショートショートストーリーとして
2008年10月より

ときどき思い出したように書き進めて参りましたが
「熟年超人」が、思ったより膨らむ気配になったため

いっそ、連続小説(?)にしてみようと
分離独立させ「熟年超人A」を立ち上げることにしました

当面は、以前のものを転載していき
その後、書き続けて参りますので

下記のサイトもご愛読下されば幸いです
http://kakkou-busten.sblo.jp/

バス旅天国の方にはリンクを入れますので
そちらからご覧ください

なお、こちらのショート×3「短誕譚」も
本来の形で書き進めますので、よろしくお願い致します

作者
posted by Bee at 18:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説