2016年04月10日

悪夢の時代

ふと目が覚めると
部屋の中が赤く染まっている

もう、そんな時間か
俺はカーテンを思いっきり開けて

夕日をもっとたっぷりと部屋に入れる
60階の窓の外には豪奢な夕焼けがビルの林を染め上げている

何年か前なら、これから街の灯りが輝きを増し
大都会の夜が魅惑の翼を広げる時刻だ

残念ながら今は違う
もうすぐあいつらが動き出すそんな時刻だ

幸い俺はNet成金だったお蔭で
このマンションを手に入れていたが

高層マンションでも高さ100mくらいの30階までの住人は
吸血鬼どもの活動エリアに入っていたし

10階以下には狼男どもやゾンビたちまで
侵入して来るようだ

むろん、夜の地上はやつらの徘徊場所だから
陽が落ちたら絶対に行くことができない

幸い、インターネットとか電気で動くものは
やつらの関心を引かないようで、そこそこ使えている

そういえば、エレベーターにもやつらは乗らないようだ
そんなこともあってか、地上波のテレビ局はほぼ壊滅状態だが

局の上の階に避難した連中が
なんとか電波を送ってくれているので、テレビも2局ほど観られる

電力会社はもっと頑強に発電所の防御を固めて
まだ残っている普通人に、命の糧である電気を送り続けている

3年前の冬、某国から帰国した男性が風邪をこじらせたような症状から
入院先の病院でゾンビ化して暴れ出したのが発端で

ハリウッド映画さながらの展開で、首都圏から日本中に広がり
気が付けば、世界中(当初は隠していた国も)が、同じ状態になっていた

それに呼応するように、満月の夜には狼男が現れ
ユーチューブには、蝙蝠に変身して飛び去る吸血鬼の姿がいくつも公開

1年経って、数が一番増えたのがゾンビだったが
動きが遅いのと呻き声のおかげで、なんとか逃げられるケースも多かった

ただ数が多いので、やつらに囲まれると食われずに逃げても
どこかを噛まれただけで、確実に後で発症することが悲劇だった

だから、噛まれたことを隠していて、一家全員ゾンビ化してから
近所の評判になって発見されることも結構あった

それに比べると、数はさほど多くはなくても
力が強くて乱暴な狼男は、最初随分恐れられていたのだが

なんと言っても、満月の夜しか狼男は出現しなかったし
噛まれた人間が狼男化した「人狼」も現れないという律儀さで

言い伝え通り、銀で作った弾丸で殺せるということもあって
さほどの脅威ではなくなったと、最近ネットでは噂されている

まあ、狼になって走り回るときのスピードが半端なくって
俺的には、未だに怖い存在ではあるけどね

それらに比べて、吸血鬼ってやつらは
貴族趣味って言うか、ファッションにうるさいのが特徴で

気に入った若い女しか襲わないので
一部の連中(もちろん一般人)に崇拝されていたりする

実は、吸血鬼の中にだって、男女どっちもの奴もいたり
年齢なんか気にしないやつもいるのを、俺は知ってるけど

それから、吸血鬼に噛まれて食料源になってしまった奴が
自身の造血のために、人の地を吸いたがる悪癖に染まるので

当局も、そんな連中の対策にも苦慮しているようだ
そうそう、こっちは十字架にはなんの反応もしないけど

ニンニクの臭いは苦手なようで、イタリア料理店や
中国料理店、ラーメン屋などは避けられているようだ

もっと決定的に効果があるのが太陽光線の紫外線で
致命的に効くんだが、彼らも大いに注意しているようだ

当局のTK(対吸血鬼)隊は、紫外線ライトを装備していて
昼間は、古い建物の地下室なんかで寝ているやつらを駆除してるらしいが

番をしている食料源たち(紫外線が効かない)が結構凶暴になって
襲ってくるので、なかなか大変らしい

滅多なことでは太陽光に焼かれる姿など見せてはくれない吸血鬼だが
ただ、なんと言ってもそれほど数多くないのと

貴族意識が強いせいか、同族で協力し合わないとか
食料源の味に好みがあるようで

吸血鬼一匹の食料源は十人程度でとどまっていることが
いつでも飢えているゾンビどもに比べると、その脅威感が薄い

もうひとつの特徴の、蝙蝠になって飛べる能力も
あまり高くは飛べないようので

今のところ、高層建築の多い都会では助かっているところだし
田舎が嫌いな貴族趣味だから、地方には出没していないのが救いかも

ただ、吸血鬼と狼男(狼女はいない!)は棲み分けができているようで
都会は吸血鬼、郊外が狼男なのは世界共通なようで

血を吸うんじゃなく、食らいつくゾンビは、どちらも敵視して出会えば闘って
殺して(死んでるのに殺すは変だが)、動かなくしている

そのゾンビの頭部が取れているところから、当局もその手でゾンビ退治をしている
いずれにせよ、いまどきの夜は本当に物騒で

こうなる以前の夜を支配していた、ヤクザな連中はめっきり減った
…というか、もうほとんどゾンビか狼男になってるんだろうな

そんな訳で、2050年はもうすぐだが
我ら人類は4大勢力(吸血鬼たち、狼男たち、ゾンビら、と一般人類)に分かれ

人口増問題や、大気中の炭素増加や社会格差などの問題からは解放されて
新たなバランスのもと、仲良く(?)地球に存在してるって訳だ
posted by Bee at 18:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説