2019年03月03日

花粉症

はっくしょーん
特大のくしゃみが出た

もうアノ時期か
俺は気持ちが暗くなった

さっき洗濯物を干すのに
ちょっと窓を開けたらこれだ

それでも、出勤の時刻は徐々に迫っている
ダイニングの椅子から立ち上がりかけたその時

テレビの中の新人アナウンサーが次のニュースを読み上げ始め
俺はテロップの『花粉の少ないスギの苗が増えている』に動きを止めた

なんでも、花粉の非常に少ない品種改良したスギ苗が、全国的に植えられているらしい
だが、まだ日本の杉の木の、ほんの0.何パーセントらしい

なんだ、花粉症に悩まされなくなるのは、ずっと先のことじゃないかと
それでも、微かな未来の希望に、ちょっぴり明るくなった俺は、元気を取り戻して家を出た

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月の裏側にひっそり駐在しているアルファケンタリウス星人のαとβが、研究成果を持ち寄って
1万地球時間ぶりの休憩時間を利用して意見交換をしている

〈君の担当案件の成果が出始めているようだね〉
《ありがとう、あなたの方もやっと順調に推移し始めているようじゃないの》

〈そう、この調子なら7休憩から8休憩くらいのうちにカタストロフィー惹起が来るかも〉
《そんなには早くないでしょうけど、でも順調にいっているわね》

αが担当している処置作業は、この衛星の主星に猛繁殖している種の繁殖意欲を低下させること
βの担当研究は、主星に繁殖した種の個々に、自分第一の観念を高じさせること

〈そうなんだ、やっと♀体に♂体への求愛行動がつまらないことだと気付かせ
♂体に♀体を守ることの価値観を、疑問視させることに成功し始めたんだ〉

《私の方も彼らの行動原理の根幹に、自分大事を教え込むことに成功できたから
この先、他者と連動して思わぬ方向に暴走するこの種族の特性を、矯正できつつあるわ》

〈文明が先進している地域では、新たな繁殖はかなりセーブされ始めている、と報告しよう〉
《私の担当分野は、地域、性別、生存年数に関わりなく効果を発揮し始めているから、この先が楽しみ》

やがて休憩時間が終わり、2体はそれぞれの研究棟に戻って行く
この衛星の主星「地球」に繁殖している迷惑な種族の増殖が止まってくれることを願いながら
posted by Beeまたの名は熟年のK at 11:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説