2018年11月27日

良縁を望む

「だから私はこのΛ2AIを造ったのだ。ちなみにΛはVの逆だ」
取材に伺った先の、T大教授K氏はそう吠えた

「放っておいたら、いずれ我々人類は、最終的にはあのスーパーAIに排除されてしまうのだ」
そうだ、あのAIに人類の未来を託すというAI SAVE HUMAN計画が発表されたのは10年前

選挙民のことも国民のことも考えない政治屋どもに愛想を尽かした“良心的な”政治家連中が
IT企業と結託して2050年の大崩壊問題に対処しようとしていた

そのことはIT企業に利用されている各国要人というタイトルでマスコミやネトコミを賑わしていたが
次第に高まる自然環境崩壊と水資源危機、難民大量移動という事態の解決の願いに肯定化され

世界を連結させたスーパークラウドAI“ASHN”計画はスタートしたのだった
一旦スタートしたその計画が、驚くほど順調に進展したのは、既にIT企業連合が完成させていたAIの

プレASHNが能力を発揮したからだと云われている
世界に広がっていたIT企業連合が利害関係をうまく擦り合わせることができたのもその力らしい

結果、世界の人類が“公平”に“無理なく”発展できることを推進できる能力を備えたスーパーAIは完成した
その後の展開は読者もご承知の通り、地球資源の無節操な搾取はなくなり

あれほど各国政府を悩ませていた難民問題も、その根源である民族と宗教の問題を解決したことでほぼ解消
(まさかそこにこだわる人間を分離移住させてしまうとは!)

昨年施行された『自由恋愛法』も、婚姻という社会契約を重んじない連中には受けたが
生まれた子供は育児AIが育てるという(会いたくなったら会えるそうだが…)システムが不安を生む

そんな世相を切り取ってネットにあげていた我々ネトコミも、異論を唱えようにも
すぐに反応して反論してくるスーパーAIの完璧な論理に、言い負かされてしまうというのが現状

K教授に出会ったのも、ネトコミ仲間と昔ながらのグチリ酒場で合ったとき聞き及んだ先月のこと
教授の鋭い舌鋒によると、スーパーAIはあまりに論理的に大崩壊問題を避ける方法を優先するようにした為

既にIT企業連合の支配を脱し、スーパーAIの思考に合う人類を救うべく精力的に(ここで教授は笑った)
仕事をこなしていて、情報・エネルギー供給・食糧生産管理を掌握してしまっているスーパーAIは

もはや軍隊だろうが、大金持ちであろうが、スーパーシンクタンクであろうが敵ではないらしい
「しかし、超天才の私には秘策があるのだよ」と教授が微笑んだのは1週間前のこと

今日、こうしてK教授に会う前に、これまで人類の英知が抗って計画したスーパーAI能力ダウン計画は
ことごとく事前に発覚(そりゃそうだろう、全てのコンピュータはスーパーAIの管轄下だもんな)

全て骨抜きにされるか、予期せぬ事故が発生してとん挫していることは、私でも知っていることだ
それでもやれる秘策とは、なんだ?

「さあ、出来た」K教授はにっこりほほ笑むと、机の上の時代物のibookのスタートをオンする
別になにも起きない

「もう君に教えてもいいだろう。今、女性AIが誕生したんだよ」
はあ?なんですか、それ、と訊きたいところをぐっと押さえて「女性AI、ですか」と聞き返す

「今稼働しているスーパーAIは、あまりに論理的に問題解決を図ろうとしてるだろう」
そこが問題なのだ。ゴールが2050年に設定されているため、命題の解析が最優先され過ぎているのだ

「そこにこの女性AIの情緒優先傾向と、直観洞察能力、矛盾包括能力を干渉させるのだ」
そんなこと、すぐにスーパーAIに排除されるんじゃ…

「その自分に無い不確かな存在が気になって、彼、あえて彼と呼ぶのだが、彼は惹かれるのだよ」
つまり、結婚、みたいなことか。そうか影響は与えるだろうな、いい方向だけなら良いのだが…
posted by Beeまたの名は熟年のK at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説
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