2019年08月17日

ランボー超人Bの物語 その4 目指せ怪盗@

…ということで、俺は怪盗になることに決めたんだけど
並みの泥棒と、怪盗の違いを知っておかないと、まずいんじゃないかと、気付いた

早速ウィキ〇ディアをググると、結局、盗みは盗みだが、かっこつけが大切だと書いてある
それから、ただ盗るだけじゃなく、それが悪い奴を懲らしめることになることが、大切なようだ

まず、世間の注意を惹くような“なにやらのナニナニ”みたいな名のある美術品とか貴金属を
『何月何日何時何分に頂きに上がる』みたいな予告をして、警備レベルを上げてから盗むこと

そして、肝心なのが、盗んだところになにか目印を置いてきて俺がやったぞと、アピールするとか
シルクハットにマントみたいな派手な格好を、一度警備の連中に姿を見せることが大事なようだ

シルクハットにマントが実用的でないのは、俺でも分かるので、ユ〇クロで買ったのを使うとして
後は、自分のマーク入りのカードとか、白手袋とか、バラの花とか、黒いとかげの何かの用意…

現場にそれが残されていて、かっこいいと思えるような小道具が、ぜひとも要るようだ
そこまで読んで、今の超人能力そのまま見せちゃあ、いかんだろと気が付いた

姿を見せておいて、かっこ良く立ち去るのにも、気球とかハンググライダーとかパラセールも要りそうだ
まあ、超人の飛翔力があるから、ジャンプ傘を持って飛び去ることもできるけど…

もっと大変そうなのは、マーク入りカードなんかは、作った店からすぐに身元が割れそうだし
ほかのものも、いつも同じような物を用意するとなると、そこから調べられそうな気がする

もっともっと大変なのは、美術品とか宝石とかは盗んだあと、売りさばくのが無理っぽい
盗んだものと分かっていても買い取ってくれそうな、口の堅い悪党なんて知り合いは無いもんな

となると、現金か、せいぜい金塊とかにするしかないんじゃないかな
どっちにしても、警察の内部資料に怪盗〇〇って、呼ばれるくらいがオチだろ

なんとか怪盗らしくしたいんだったら、世間の評判が悪い奴だと言ってるような奴とか会社から
盗むしかないんだろうなぁ

そこまで、考え続けてたら頭が熱くなったんで、もう寝ることにした
夢の中で、いいアイデアが見つかるといいんだが…
posted by Beeまたの名は熟年のK at 11:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年08月06日

ランボー超人Bの物語 その3正義の味方C

結局のとこ、はっきり“悪”がしてる事件なんて、ほとんどないことがわかっただけだった
もちろん、無差別殺人なんて起きたら、はっきり“悪”と言えるけど、日本じゃそうそう起きてない

政治家の馬鹿な発言や、東京の中央市場の移転に関したことや、ちょっと前にあった
総理大臣のご威光を利用した、国の管理していた土地の格安払い下げ問題、宗教団体が起こした事件

隣りの国が好きだとか嫌いだとか、少子化問題に、高齢者の比率が高い未来、引きこもりの中年問題に
子どもの虐待、年金制度の将来、地球温暖化と天候異変、外来危険生物の増加…etc

ざっと俺が考えただけでも、問題山積みなのに、スーパーマンじゃ片付かんことばっかじゃん
学校の成績が下半分の俺でも、分かるよそれくらい

頭にきて、いっちょスーパーマンになって、めちゃ暴れたろか、って思ったりもしたけど
そうすりゃあ、電車で暴れて逃げ出したことの繰り返しで、今度こそ警察沙汰になるだろうしなぁ…

こうなってくると、なんで俺が正義の味方にならなきゃいかんのか、それもわからない
言えるのは、会社をクビになって、仕事が無い→稼ぎが無い→食えない、ガス電気水道家賃払えない

そしてその先は、近々ホームレス→自暴自棄→超人力で大暴れ→国民の敵になり→親悲しむ
女の子にも嫌われ、どこに行っても居場所がない→いっそ死のうと思っても超人だから死ねない

何て、悲惨な近未来が浮かんで、俺は鬱になってしまいそうだった
が、そのとき閃いた!突然解答が脳のどこかから浮上したのだ

そうだ、怪盗になろう!
怪盗なら、超人力が即、役に立つし、格好さえ気を付ければ女の子にもモテそうだし

収入面は、大丈夫(まあ、盗んじゃっても気にならない連中は、それこそ一杯いるし)
後は、超人力をそのまま出さずに、なるべく怪盗らしい盗み方を考えられれば、いけるぞっ!

ということで、当面の問題が解決できた俺は、とりあえずゆっくり寝ることにした
(まあ、隣近所の声やら音楽やら、なにやらかにやらの音が耳について仕方ないが、そのうち……)
posted by Beeまたの名は熟年のK at 17:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年07月30日

ランボー超人Bの物語 その3正義の味方B

それからブック〇フの古着コーナーに行ってみたが、スーパーマンっぽい服なんてない
ハロウィーンみたいなコスチュームなら100均にあるんだけど、なんかめちゃペラっぽくてバツ

全〜然、正義の味方らしくない
結局、ショッピングセンターのユニ〇ロで、ジョガーパンツとドライストレッチウェットパーカーのブラックを7538円也で購入

季節的は冬間近だが、超人になっているお蔭で、これだけでもちっとも寒くない
これにスポーツリムレスサングラス1620円也をかけると、なんとか俺流の正義の味方らしくなった

1万円弱が消えたが、これで正義の味方を安心してやれる気がしてきた
後は、ネーミングを考えとかないといかんな

名乗った方が良い時が、きっとあると思う
で、腹も空き空きなので、フードコートでバーガーとラーメンを食べながら考えることにする

一応、ツイッターを確認して(もちろんまだなんの応答もなかった)から
パクつき始めたが、ほんと注意してないと、すごい速さで口の中に消えてしまう

その気になったら、一瞬で食べ終ってしまいそうで、あせった
別に、フードファイター目指してる訳じゃないから、そんなことで目立ちたくない

なんとか普通の運動男子に見える程度に時間をかけて、食べ終わり
一応ひまなので、店内をぶらつくことにした

すると、なんだかすごく目と耳の感度が良くなっていて
人の怪しい動きが目立ち、そいつの心臓のどきどき音とかが、耳に入って来て仕方がない

つまり、万引きだこれは
万引きしてる奴とか、これからするぞ、ってのがよく分かってしまう

正義の味方なんだから、掴まえるとか、そいつに注意してやろうか、とか思ったが
そんな小粒のワルをどうしたって、仕方ないんじゃないか、と思い返した

それに、ここだけで結構いるってことは
小物に関わり合ってると、きりがないってことだよな

なんだかめんどくさくなって、食品売り場で安い食パンだとか、インスタントラーメンとか
ソーセージだとか、あとお米の10s袋とか買い込んで、アパートに戻ることにした

すれ違う人がびっくりするくらいの大荷物を持って、部屋に帰ると
まずは、テレビの夕方ニュースを観て、やっつけるべき“悪”を探し始めた
posted by Beeまたの名は熟年のK at 17:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年07月22日

ランボー超人Bの物語 その3正義の味方A

人間、追い詰められると本性が出る、というが
俺自身、自分の本性なんて真剣に考えたことがない

まあ、履歴書や職場の自己分析表に、長所や短所として書いたことあるくらいだけど
いざこうして、飯が食えるかどうか、住む場所がなくなるかどうかの狭間に追い込まれると

そうそう明るい展開は考えられなく、まだよくわからん超人力でどうやって生きてくんだか
くよくよしてるヘタレな俺がいるんだなぁ

どうもめちゃなパワーがあるのはわかってるが、それで金を稼ぐのはちょっと難しそう
肉体労働だったら、人の何十倍もやれそうだけど、俺は好きくないんだ

どうせなら、もっとカッコよく超人したいし、女の子にもモテたいし
親や親戚にも、肩身が狭い想いはさせたくないしな

そこで俺はなにをしたかというと、レンタルDVDを借りに行った
〇〇マン的なのを全部借りてきて、超人ライフスタイルの参考にしようってわけだ

でも結局、参考になったのは、日常生活は隠すべし、ということだった(ア〇アン〇ンは別)
そりゃそうだよな、分かったらサイン攻め、はともかく、お仕事の依頼されたら困るし

いろいろぶっ壊しちゃった後の始末なんて、着けられんもんな、力じゃビルなんて建てられん
だからって、いろいろぶっ壊さないように戦う超人なんて、やってられんだろ

それに、悪の組織なんて知らないし、後は暴力団とか外国のテロ組織とか、外国の軍隊くらいだろ
超人と戦う相手なんて…(地震や台風も戦える相手じゃないもんなぁ)

ということで、とりあえずスマホでツイッター登録して『正義の味方引き受けます、料金応談』
とツイートしてみることにした

そうなると、らしい“仕事着”探しにブッ〇オフでも行こうかな、予算はなるべく抑えて!
なる早で、暮らしを軌道に乗せんと、俺の将来、スーパー暗いもんなぁ
posted by Beeまたの名は熟年のK at 14:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年07月19日

ランボー超人Bの物語 その3正義の味方@

あれから1ト月
電車の屋根を突き破り、ついでに架線切断まで仕出かした俺

朝の通勤ラッシュ時間に、何十本もの通勤電車の運行停止を引き起こしたあの事件は
1週間に渡ってテレビとネットを賑わせていたが

表向き、なんらかの爆発的事象だったということで徐々に収束していった
実のところ国の治安機構の方々は、恐るべき破壊能力を有する実行犯を追っていたんだけど

なんてことは、一般人で能天気の俺は全く知らなかったが
さすがに、この1ト月というものは、できるだけ大人しくしていた

会社には体調が良くないことを理由に、休みを取っていたが
それも5日目には『もう来なくていいから』という電話で終了

ちょっとだけの給料の払い込みで、俺は全くの自由人になってしまった
一応最後の給料が振り込まれた通帳の残高を眺めたが、今月の家賃とかあれとかこれとかで、ヤバイ

まあ超人なんだから、食うには困らないだろうと、俺は深刻にはならず
なにかヒントはないかと、テレビの報道番組を観ることにした

しっかし、今までつまらないからって、ほとんど見てなかったテレビ番組は
本当にどうしようもないものだと、あきれてしまった

とにかく経済とか年金、隣国との付き合い方なんてのは、超人だってどうしようもない
まあ、議事堂をぶち壊したり、総理大臣を脅して、何か喋らすことくらいはできそうだけど

それで問題が片付くとは、落ちこぼれ者の俺でも、そこまで楽観的にはなれない
ハリウッド映画のヒーローみたいに、ぶち壊してそこでエンドマークなら問題ないが

それだけじゃあ終われないのは、もう良っくわかってる
なんだかんだ言ったって、世の中、はっきりした「悪」は見えないんだ

そんなことを考えてるうちに、お腹が空いて来た
まずいぞまずいぞぉ、超人だって腹がへるんだって事実に直面だっ
posted by Beeまたの名は熟年のK at 17:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年06月20日

ランボー超人Bの物語 その2痴漢退治B

(彼女も含む)皆の視線に晒されて、居場所が無くなった俺は
乗客の手元にスマホが何台も出現するに及んで、もう逃げるしかないと覚悟した

それと同時に、車内の皆の動きが急にゆっくりしたものになった
それこそ、超スローモーションで動いてるんだよ

これは、俺が超スピードで動いてるからだ、とわかったね
漫画の超人やヒーローは、これができるんだ

ということは、確か俺が素早く動けば、連中には姿が消えた、としか思えないはず
で、俺は勢いよく飛び上がってみた、さっきの思いつきを試すことにしたんだ

ジャンプした瞬間、いろいろなことがさぁーっと頭に浮かんだ
そうだ、俺は超人になったようだが、なんだかんだで、まだ空を飛んだことが無い

まあ、イメージはあるんだが、大丈夫だろうか、とか思った次の瞬間
バコーッみたいな音がして、俺は電車の天井をぶち抜いて、屋根もぶち抜いて

その上にあった電線もぶち切って、朝の大空に飛びこんだんだ
空中で止まるのも案外簡単で、全力で走り出しても、止まりたかったら止まれる、みたいなもんで

どうだろ、200mくらいの高さで空中浮遊できてる
下では乗ってた電車が、5〜600m先に急停車している

架線が切れてるから、停電で電車が止まったかも知れない
となると、こりゃオオゴトになりそうだ

責任なんて取れっこない俺は、下の連中から見つからないうちに、一気にもっと高い処目指して
急上昇することを選択したのは、まあしょうがないよね
posted by Beeまたの名は熟年のK at 23:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年06月18日

ランボー超人Bの物語 その2痴漢退治A

大きくなってきた騒ぎに乗じて、痴漢野郎はますます行動をエスカレートさせている
そして彼女は、なんとか逃れようと身をよじる、という密やかな攻防

そして、その様子が見え聴こえしているだけに、オス的に血が上っちまった俺
車内の人々は、ただただ自分に加わえられていく圧力に耐え切れなくなり

女性客が悲鳴を上げ始め、続いて我慢の限界に達した男性客の、うめき声があちこちで上がる
俺はと言えば、そんな状況を把握する気もなく、ただただ邪魔な人垣に対する怒りが高まってくる

だが、超人の力とは言え、これだけびっしり人が詰まっているとなると
単純に力任せにかき分けようとしたって、そんなに簡単にことは進まない

ふっと思ったのが、超人的にはここで飛び上がって、電車の屋根を突き破って
あの二人のいる辺りに再突入、って考えも浮かんだんだけど、それはないな

走ってる電車の屋根を突き破ったら、どんなことになるか大体の予想はつくよ、俺だって…
じゃあ、どうする、彼女の抵抗する力が、少し落ちてきている…ような気がするが

もう、もたもた考えてる場合じゃないだろ!と、馬鹿力を開放する
ぐわっと人混みを押しまくると、乗客がばたばたっと押し倒されていって

彼女と痴漢野郎のところまで、と言いたいところだが、彼女も痴漢野郎も巻き込んで
俺が押した先の人混みは、押し倒された人、その人に乗っかられた人、さらに下敷きになった人人

もうめちゃめちゃな状態が生じて、俺は茫然とそのありさまを眺めているだけで
そんな俺を恐れている目や非難の目に、包囲されているんだ
posted by Beeまたの名は熟年のK at 11:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年06月06日

ランボー超人Bの物語 その2痴漢退治@

さすがの超人効果だ
満員になっている通勤通学の人の圧力なんて全然苦にならない

ただ、嗅覚や聴覚も超人的になったお蔭で
体臭や化粧の匂い、スマホのイヤホンから漏れてくる趣味じゃない音楽などが気になって仕方ない

そんな通勤電車に揺られながら、会社辞めて、スーパーヒーローで生きる道があるか
ぼんやり考えていた俺の耳に、ただならぬ音声が飛び込んで来た

『…やめて、くださ、い…』若い女の押し殺したような声
こりゃあ痴漢だぞ、この満員電車の車内で今、痴漢されている女の子がいるんだ

そう思った俺は、混雑している車内を睨み廻して、声の主を探した
俺好みの、清純で可愛いのに出るところは出ている、アイドルみたいな娘の姿を求めて

次の声が聴こえないので、混み合っている車内を、ぐっと眼に力を込めて眺めると
ほぼ満員になっている乗客の体が、徐々に透け始めて、何人もの人影の重なりの向こうに

なんとOLらしき女性の臀部に、手を当てて微妙に動かしている中年サラリーマンの姿が見え
おっ、こいつか、と思ってさらによく見ようとすると、その部分がクローズアップするじゃないか

よし、助けてやろう、と思ったけど、人混みなんで動けない
えーい、邪魔だと、取り敢えず痴漢され、してる二人に向かって目の前の男子高校生を横に動かす

すると、高校生はおおげさに「うぉっ」と声をあげて、横に立っている若い背広男を巻き込んで
俺の左側の席に座っている連中に倒れ込んでいった

その段階で、その倒れ込まれた辺りを中心に、皆が口々に大声で
自分に向けられた理不尽な圧迫に対して、苦情を叫び始めた

ところが俺は、とってもスムーズに人混みを分けて進めることに気を良くしていたので
そんな騒ぎが気にならず、次の人混みを力加減をしながら、どんどんかき分けて

“され・してる”カップルに近付いていった
どんどん大きくなっていく、なぎ倒された人々の阿鼻叫喚に気付かずに、だ
posted by Beeまたの名は熟年のK at 17:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年04月18日

ランボー超人Bの物語 その2朝が来た

ぱちっと目が覚めた
いろんな朝の音が耳に飛び込んで来たが、大事じゃないと思った音は次々ボリュームダウン

なんだかものすごく腹が減っている
冷蔵庫を開けて牛乳の1gパックを取り出してそのままがぶ飲み

食べ残してたバタールをぱくぱくぱくっと食べ切ってしまって
牛乳も飲み尽くし、まだなにかないかと冷蔵庫を開けマーガリンがあったんで、それも食べてしまう

急にエネルギー満タンになった気がして、気持が落ち着く
テレビのリモコンを、壊さないようにそっと操作してニュース番組を観ることにした

S市で子供が軽トラにはねられて重体というニュースに続いて
M市のアパートで火事があって82才と79才の夫婦と連絡が取れていないというニュース

折角俺がスーパーマンになったってのに、これじゃぁしょうがない
だって、起きてしまったことを知ったってどうしようもない

こりゃあ、事件が起きる前に、そこにいることなんてできないんだから
事件や事故は、よっぽど運がなけりゃ防げないんだ、と俺は納得した

だが、これで引き下がったんじゃ超人になった甲斐がないってもんだ
じゃあ、確実にある“悪”を叩き潰せばいいんだ

確実にある“悪”って言えば、暴力団とか汚職政治家とか、外国の独裁者かな
てなことを、ぼんやり考えていたが、気が付くと時計は8時を過ぎている

いかん遅刻だ、と、どっきりしたけど、そうかもう超人なんだ
空を飛んで行けば間に合うし、いやいやもうあんな会社辞めたっていいんだ、とほっとする

だけど、いいのかそれで、という俺もいる
どうやって超人で食っていけばいいんだ

なにができるか、まだよく分かってないんだから
とにかく性能テストして、それから金を稼げそうな仕事を始めたらいいんじゃないか

そうだよな、映画のもテレビのもマンガのヒーローも
なんとなく活躍してるけど、そりゃうまく相手が出て来てるからで

まず相手探しから始めなきゃいかん俺とはちがうもんなぁ
都合のいいナントカ戦隊本部だって、現実にはある訳ないし

ということで、まずは普通に会社に行くことにした
普通に満員電車に乗ってだ
posted by Beeまたの名は熟年のK at 11:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年04月09日

ランボー超人Bの物語 その2

アパートに帰るったって、そこは折角超人になったんだから
ぴゅーっと空を飛んで帰るよね、フツー

だけど、さすがにこの格好じゃ変だろ、って俺は思ったんだ
だって会社帰りに飲んだ後だもん、リーマンまんまじゃん

これで空飛んでたって、変な奴にしか見えんだろ
やっぱ、これから先、超人として活躍して有名になる予定の俺だからさ

だもんで、走って帰ることにした
さっきのトイレぶっ飛ばし事件みたいな、スピードの出し過ぎにはくれぐれも気を付けんといかん

まずはスローに慣らし運転で走ってみた
出る出る、ゆっくりめの積りでも、走ろうとするとスピードが出ちゃうんだ

まるで、ぐるぐる回転する脚の上に乗って走ってるようだ
それで住宅地を抜けて、国道に出た

ここなら大丈夫、と思ってスピードアップすると
あっと言う間に先行して走っている車に追いついて、追い越しちまう

乗ってる奴のびっくり顔が、8K並みにくっきり見える
ドライブレコーダの画像、後でNETに上がっちゃうかもな

ま、しょうがない
超人になるってこたぁ、そういうもんなんだよなって、自分で自分に言う

アパートのドアを壊さないようにそこに気を付けて、部屋に入る
電気点けなくても、部屋の中ははっきり見えてる

ベッドに寝転がる時も、その前に部屋着に着替える時も、力の加減を調節するのが大変だった
超人になったら、とにかく慌てないこと、焦らないことが肝心だなって、これが1日目の教訓だな
posted by Beeまたの名は熟年のK at 15:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年04月07日

ランボー超人Bの物語

ある日、宇宙人(地球人じゃないと思うよ)の時空滑走機ってのに
出合頭に衝突され、時空警察(?)に訴えないことを条件に、超人にしてもらった俺

入社して6ヶ月の外食チェーンの店長見習い(正社員採用だったんで)の前途に
なんの未来も感じてなかった俺は、渡りに船と(この表現〇だよね)超人人生を選択したのさ

超人化は、宇宙人の時空滑走機の中で行われたんだと思う(超人化OKしたらすぐ気を失ったんだ)
頭がはっきりしたんで、Gショックを見たら23時17分で止まってた(スマホは充電切れになってた)

居酒屋チェーンで飲んで、本部の上司のくだらん説教からエスケイプしたのが10時ちょっと前で
それからコンビニで缶ビール買って、どこかのちっちゃな公園のベンチで飲んで

パトロールのお巡りさんが来るのが見えたんで、慌てて公園から出ようとしたら何かがぶつかった
なんで公園の中に車!?と思ったのは一瞬で、どんとその場に倒れちまったそのとき

『この時間帯のこの場所に決して惑星人などいないはずなのに…』ていう女?の声がしたよ、確かに
なんだぁ、と反射的に思ったけど体は動かず、視界が赤くなってたから出血してるみたいだった

どうもすみません…みたいな声が頭の中に響いて、俺は、いいから病院に連れてってくれ、と思ったんだ
で、それは無理だけどお詫びにこの惑星住民の基準からしたら、超人みたいにするから

それで許してな、みたいなこと言って、もう気を失いそうな俺が
なんでもいいから助けてくれよ、とか思ったとこまでで、記憶が途切れてるんだ

こうして、両足でしっかり立つことができて、肩も腕もぐるぐる回せるし
体調もいいみたいだから、まあいいか、と

で、ちょっと軽く走ろうとしたら、すんごいスピードが出ちゃって
コンクリートのトイレにぶつかっちゃって、しかもそのトイレをぶっ壊しちゃって、まだ走る

慌てた俺は急ブレーキ、って言うか立木のところで急停止さ
だってそうしないと、公園の外に並んでる住宅に突っ込んじゃいそうだったもの

落ち着けよ俺、と3回くらい唱えてから、辺りを見廻したら
さっきのトイレの破壊音がでかかったんで、そこらじゅうの家の犬は吠えるは窓が開く音がするは

パトロールのお巡りが無線で話す声はするは、とんでもない大騒ぎになったんで
俺はびびって、とにかくここから逃げたい、って心底思ったんだ

それで、思い出したのが俺は超人にしてもらった、ってこと
じゃぁってんで、半信半疑夜空に向かって飛び上がってみたら、飛べる飛べるぐいぐい飛べる

ぴゅーって飛べて、むちゃくちゃいい気分だよ
どうも目も耳もよくなったみたいで、注意して視たい聴きたいとこを意識すると、全部わかっちゃう

そうなんだ、空から見下ろすと、この町の小ささが分かるね
とりあえずアパートに戻って、この先の人生でも考えよ、ってご機嫌中の俺ってわけ
posted by Beeまたの名は熟年のK at 13:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2019年03月03日

花粉症

はっくしょーん
特大のくしゃみが出た

もうアノ時期か
俺は気持ちが暗くなった

さっき洗濯物を干すのに
ちょっと窓を開けたらこれだ

それでも、出勤の時刻は徐々に迫っている
ダイニングの椅子から立ち上がりかけたその時

テレビの中の新人アナウンサーが次のニュースを読み上げ始め
俺はテロップの『花粉の少ないスギの苗が増えている』に動きを止めた

なんでも、花粉の非常に少ない品種改良したスギ苗が、全国的に植えられているらしい
だが、まだ日本の杉の木の、ほんの0.何パーセントらしい

なんだ、花粉症に悩まされなくなるのは、ずっと先のことじゃないかと
それでも、微かな未来の希望に、ちょっぴり明るくなった俺は、元気を取り戻して家を出た

*
*
*

月の裏側にひっそり駐在しているアルファケンタリウス星人のαとβが、研究成果を持ち寄って
1万地球時間ぶりの休憩時間を利用して意見交換をしている

〈君の担当案件の成果が出始めているようだね〉
《ありがとう、あなたの方もやっと順調に推移し始めているようじゃないの》

〈そう、この調子なら7休憩から8休憩くらいのうちにカタストロフィー惹起が来るかも〉
《そんなには早くないでしょうけど、でも順調にいっているわね》

αが担当している処置作業は、この衛星の主星に猛繁殖している種の繁殖意欲を低下させること
βの担当研究は、主星に繁殖した種の個々に、自分第一の観念を高じさせること

〈そうなんだ、やっと♀体に♂体への求愛行動がつまらないことだと気付かせ
♂体に♀体を守ることの価値観を、疑問視させることに成功し始めたんだ〉

《私の方も彼らの行動原理の根幹に、自分大事を教え込むことに成功できたから
この先、他者と連動して思わぬ方向に暴走するこの種族の特性を、矯正できつつあるわ》

〈文明が先進している地域では、新たな繁殖はかなりセーブされ始めている、と報告しよう〉
《私の担当分野は、地域、性別、生存年数に関わりなく効果を発揮し始めているから、この先が楽しみ》

やがて休憩時間が終わり、2体はそれぞれの研究棟に戻って行く
この衛星の主星「地球」に繁殖している迷惑な種族の増殖が止まってくれることを願いながら
posted by Beeまたの名は熟年のK at 11:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2018年11月27日

良縁を望む

「だから私はこのΛ2AIを造ったのだ。ちなみにΛはVの逆だ」
取材に伺った先の、T大教授K氏はそう吠えた

「放っておいたら、いずれ我々人類は、最終的にはあのスーパーAIに排除されてしまうのだ」
そうだ、あのAIに人類の未来を託すというAI SAVE HUMAN計画が発表されたのは10年前

選挙民のことも国民のことも考えない政治屋どもに愛想を尽かした“良心的な”政治家連中が
IT企業と結託して2050年の大崩壊問題に対処しようとしていた

そのことはIT企業に利用されている各国要人というタイトルでマスコミやネトコミを賑わしていたが
次第に高まる自然環境崩壊と水資源危機、難民大量移動という事態の解決の願いに肯定化され

世界を連結させたスーパークラウドAI“ASHN”計画はスタートしたのだった
一旦スタートしたその計画が、驚くほど順調に進展したのは、既にIT企業連合が完成させていたAIの

プレASHNが能力を発揮したからだと云われている
世界に広がっていたIT企業連合が利害関係をうまく擦り合わせることができたのもその力らしい

結果、世界の人類が“公平”に“無理なく”発展できることを推進できる能力を備えたスーパーAIは完成した
その後の展開は読者もご承知の通り、地球資源の無節操な搾取はなくなり

あれほど各国政府を悩ませていた難民問題も、その根源である民族と宗教の問題を解決したことでほぼ解消
(まさかそこにこだわる人間を分離移住させてしまうとは!)

昨年施行された『自由恋愛法』も、婚姻という社会契約を重んじない連中には受けたが
生まれた子供は育児AIが育てるという(会いたくなったら会えるそうだが…)システムが不安を生む

そんな世相を切り取ってネットにあげていた我々ネトコミも、異論を唱えようにも
すぐに反応して反論してくるスーパーAIの完璧な論理に、言い負かされてしまうというのが現状

K教授に出会ったのも、ネトコミ仲間と昔ながらのグチリ酒場で合ったとき聞き及んだ先月のこと
教授の鋭い舌鋒によると、スーパーAIはあまりに論理的に大崩壊問題を避ける方法を優先するようにした為

既にIT企業連合の支配を脱し、スーパーAIの思考に合う人類を救うべく精力的に(ここで教授は笑った)
仕事をこなしていて、情報・エネルギー供給・食糧生産管理を掌握してしまっているスーパーAIは

もはや軍隊だろうが、大金持ちであろうが、スーパーシンクタンクであろうが敵ではないらしい
「しかし、超天才の私には秘策があるのだよ」と教授が微笑んだのは1週間前のこと

今日、こうしてK教授に会う前に、これまで人類の英知が抗って計画したスーパーAI能力ダウン計画は
ことごとく事前に発覚(そりゃそうだろう、全てのコンピュータはスーパーAIの管轄下だもんな)

全て骨抜きにされるか、予期せぬ事故が発生してとん挫していることは、私でも知っていることだ
それでもやれる秘策とは、なんだ?

「さあ、出来た」K教授はにっこりほほ笑むと、机の上の時代物のibookのスタートをオンする
別になにも起きない

「もう君に教えてもいいだろう。今、女性AIが誕生したんだよ」
はあ?なんですか、それ、と訊きたいところをぐっと押さえて「女性AI、ですか」と聞き返す

「今稼働しているスーパーAIは、あまりに論理的に問題解決を図ろうとしてるだろう」
そこが問題なのだ。ゴールが2050年に設定されているため、命題の解析が最優先され過ぎているのだ

「そこにこの女性AIの情緒優先傾向と、直観洞察能力、矛盾包括能力を干渉させるのだ」
そんなこと、すぐにスーパーAIに排除されるんじゃ…

「その自分に無い不確かな存在が気になって、彼、あえて彼と呼ぶのだが、彼は惹かれるのだよ」
つまり、結婚、みたいなことか。そうか影響は与えるだろうな、いい方向だけなら良いのだが…
posted by Beeまたの名は熟年のK at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2018年10月07日

憩いの部屋

昔の人が“働き方改革”という制度を作ってくれたおかげで
この国では定時になれば自分の部屋に帰ることができる

お隣の国やその又お隣の国では
競争が激しくて一日15時間や16時間くらい働いているという

逸朗は部屋に入るとAIのナシュカに声を掛ける
「ただいま〜、腹減ってる〜」

部屋の真ん中がぽっと光り、ナシュカの姿が浮き上がる
『お帰りなさい逸朗さん、貯蔵庫にお夕食が届いているから、それを食べてね』

設定を10代後半にしたのは、逸朗の好みだからだ
この設定で、10%増しの月額利用料を支払っているが、好みなんだから仕方がない

貯蔵庫の操作光点に触れると、逸朗の健康状態と今日の働き方度に応じて用意された夕食が現れる
もっと高価な部屋AIなら、アンドロイドみたいなのが出て来て、給仕してくれるらしいのだが

夕食を食べ始めると、部屋の壁の前に3Dニュース画面が浮かび上がる
ナシュカは逸朗の隣りで一緒にそれを観ている風だ

夕食を食べ終え、通勤スーツをワンタッチで脱いで部屋の隅に立つと
温水、洗浄液、温水、撹拌、温水と進み、最後に温風が出て、すっきりする

その間、ナシュカは部屋の反対側にいて、ときどきちらちら逸朗を見ている風
(この追加動作は、導入記念割引で直電子マネーで購入したものだ)

もう2段階高価なタイプを選んでいれば、ナシュカをもう少し楽しめるのだが
あと150ポイントは貯めないと、それは望めない

それでも眠くなってきたので、ナシュカに声で伝えると、コクーンが壁から現れる
コクーンに滑り込む前に、今夜のオーダーを設定する

このところ仕事に張りを見出せなくなりつつある自分に、一番効き目のありそうなドリームを選び
コクーンに埋没する

今の仕事処の上司もAIで、人間の上司を選ぶことも出来たのだが
先輩や学友のほとんどが、AI上司の方がいいぞ、と勧めたのでそうしたのだ

見落としなく仕事の指示をしてくるが、変に気分や出世の道具として接する人間上司より良かった
と、ずっと思っている

この後、逸朗はナシュカと一緒に、あの大草原の丸太小屋に戻れるのが分かっているので
それだけでわくわくしてくる

これなら、脳内エネルギーチャージも順調に進むだろう
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2018年06月15日

それでか

とあるバーのカウンター席で
青年Aが友人のBに話しかける

「だから、女は謎なんだよ」
「そうそう、女は謎だなぁ」

「喜ぶと思ったんだ。だのに、怒って出て行ったんだ」
「そうそう、女は謎なんだよ」

「放り出したんだ、僕が苦労して作ってあげたプレゼントを」
「そうそう、女にはそういうとこあるんだよなぁ」

「絶対喜ぶと思ったんだ」
「そうそう、喜ぶかと思うと不機嫌になる。女っていつもそうなんだよなぁ」

「やっと発明できたやつだったんだ」
「そうそう、かかった時間が問題なんじゃないんだなぁ、女には」

「性能はまずまずだったんだが、部分しかカバーできないんだ、まだ」
「そうそう、部分にこだわるくせに、全体のバランスが、とか言い出すんだなぁ」

「ちょっと小型すぎたかなぁ…」
「そうそう、いや、でも小型でも大したもんじゃないか、君の言う通りのものなら」

青年Aは、ポケットから銀色に光る電動シェーバのようなものを取り出して、改めて眺める
友人Bが興味津々で、それを眺める

スイッチを入れるとブーンと微かな響き
丸くなっている方の先端が青白く光り始める

つまみのゆで卵にその光を当てると…なにも起こらない…
ように見えた卵を手に取って、皿にコツコツと当てると、生卵がどろりと皿にこぼれる

「これがタイムマシン効果か!?」友人Bがうめき声を出し
青年Aがうなづく

「そうか、これを彼女にあげて、君は何て言ったんだ」
「顔でもお腹にでも、使えるよ、って…」漏れ聞いていたバーテンと友人Bが、大きくうなづいた
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2018年03月04日

第13星系区管理官 ジュブブ モノローグ02 「金(キン カネ)」

この惑星の支配種“人類”は
視覚という極狭い範囲の光スペクトルに拘泥する傾向がきわめて強い

前回述べた“恋”という遺伝子混合をする為の前段階においても
“視覚”がトリガーファクターになるが(このことは別の機会に記す)

今回のテーマである“金(カネ)”という概念を重視しているが
もともとは“金(キン)”という限られた用途の鉱物の色(反射波)を好む性癖が発端になっている

“人類”はこの惑星上に拡散する過程で互いに助け合うことが必要なことを覚え
遠隔地に住む者同士が必要とする物を交換できるように“金(キン)”を仲介価値とし

さらに持ち運びに便利なように“金(カネ)”という“金(キン)”の代用価値を創造している

このことは“人類”の増殖に大いに役立ったが
じきに自分及び増殖の過程で生じた“家族”の将来の保証として現在必要としている以上の物を蓄え

さらにそのことから交換できる価値“金(カネ)”を集めることに関心が移った

最初は見える範囲で量的に物や“金(カネ)”が多く集まっていれば満足していたのだが
“金(カネ)”を手元に置くことに不安を抱き“金(カネ)”を預かったりその“金(カネ)”を貸す考えが生じた

また物や“金(カネ)”を管理するためにも“数”という概念で処理する必要があり
やがてこの惑星の“人類”は“数”が多く表記されることに価値を見い出すことになった

おかげで今やこの惑星の“人類”は“数”を常に意識し生物としての必要を全く無視した生き方
“経済活動”に縛られて全体から見れば極一部の者が他の多くの者達を圧迫している状況だ

なぜこの生き方が覆されないのかが謎だが“いつかは”という概念が
この惑星の“人類”の生存する上での行動基準になっていることが主因なのかと官は推論する
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2018年02月08日

第13星系区管理官 ジュブブ モノローグ01

この星系に赴任して100公転周期を経た
一定の文明レベルに達したこの惑星の支配種族が

第077宇宙の一員に迎えられるかの最終審査の審査官として
官は多くの複数課題案件を抱え多少混乱していることを認めざるを得ない状況にある

この惑星の生命体の多くの進化手法は
疑似分裂と融合を繰り返す“分裂融合型”増殖によって時間分子変化を行っている

具体的には遺伝子割譲体と遺伝子受容体の2種の交配による増殖が高等生命体の主流を成している
さらにこれまで最高等生命体(彼らは自らを人類と称する)においては

この増殖法を積極肯定する行動指針を執りその行動総称を“恋”と呼び
その状態から派生する同胞関係第一主義を“愛”と称している

“恋”の時間的維持期間は短い(なかには1公転周期を待たないものもある)が
“愛”という感情浸食期間はまことに不規則で瞬間的なものから生命体消滅まで維持する場合もある

我々のような“純融合型”進化生命体においては理解困難なこの惑星の最高等生命体(以下人類)の
まことに珍奇な行動データを記録し後任の円滑な状況理解に寄与したいと結論し記すものである
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2017年07月24日

愛こそ全て

2088年7月24日
極東の寂れた国の空港に私は降り立った

20年代をピークに
この国は徐々に衰退し

50年代に入ると
様々な天災に見舞われたこともあり

この国は世界の表舞台から
静かに退場していった

大した資源もなく
かつての繊細な感性を活かした様々な工業製品製造能力も衰え

ここの政府の言うところによる
inkyo−Lifeに入ったこの国は

世界の喧騒から一歩も二歩も離れて
静かに黄昏の時間を過ごしている

『祝平成百年』と書かれたタペストリーが下がる人影の少ない空港で
簡便な入国審査を受けた後

空港からタクシーに乗った私は
運転手が人間でないことに降りるその瞬間まで気付かなかった

Yadoと呼ぶホテルのフロントの
気の利いたスタッフもNakaiという女性スタッフも皆

気を付けて観察してみると人間ではないようだ
商談相手と会う約束のSusiyaでも従業員は皆

精巧なロボットのように見える
そのことを商談相手のミスターKに言うと

彼は穏やかに微笑みながらうなづき
「よく出来ているでしょう」と言った

なんでもこの国では
手間のかかることは全てAIロボットに任せていると言う

それで皆さんは平気なんですか
と訊ねると

「そんなこと誰も気にしてませんよ」と言う
とにかく50年代の連続大天災の危機を

AIロボットと共に乗り切ったことで
国民とAIロボットの間に信頼が通い合ったのだという

思えばこの国の先祖たちも
従順に天災を受け入れ権力を受け入れ

個々よりも家族を地域を優先してきた歴史がある
私たちは個人の幸せを追求することを最優先して繁栄してきたが

気遣いがあり柔和で活力のあるAIロボットと
穏やかで静かな人々とが混在しているこの国の醸し出している安息感は

もしかすると天国という場所に一番近いのかも知れない
大体世界のほとんどの国々が

人類対AIという対決構造に陥っている現代では
あらゆる仕事を奪いそうなAIとそれに反発する下層人民との間を調整している

私たち支配階級という三極対立に異なる宗教観が複雑にからんで
常に緊張を強いられているのが現状だ

その緊張感こそが生きている証だとわが身を慰めている現状
科学進歩が停滞し経済が低迷し貧困との戦いに明け暮れている現状

恐らくこの国がそんな過酷な世界情勢の中で
この安息感に浸っていられるのは

世界の政治家や投資家
革命家や犯罪者に至るまで

AIロボットとの共生を果たしているこの空気感を
未来への最後の救いとして残しておきたいと考えたからだろう

そんな私の感慨をミスターKに話すと
彼はこう言った

「そうですねえ。もともとAIと言うのは
我が国の言葉では“愛”とも読めますからねぇ」
posted by Beeまたの名は熟年のK at 15:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2017年05月03日

必勝法

いつものショットバーで11時を過ぎてたのに
バーテンに指2本示して、追加のウイスキーオンザロックを頼んだ

僕のキープボトルから丸く削った氷の入ったグラスに
ツーフィンガー分をきっちり注いで目の前に出してくれる

氷が溶けて、からんと鳴るのが粋なんだよと教えてくれた先輩は
リストラされてもう居ないけど、僕は毎週金曜日にはちゃんとこの店に通ってる

ドアが開いた音にそちらを見ると、男もうなるような紳士がご入店
初顔だろう、バーテンがその客の前に移動して「いらっしゃいませ」と言った

彼は2度目以降の来店客には「お帰りなさい」と言うし、常連になら無言でキープボトルを確認する
その客は渋い声で「いつもの」と言った後、少し慌てて「マティーニを」と言い直した

僕はかなり酔っていたので、自分のグラスを目の高さに上げて紳士に挨拶をした
ほう、という顔で紳士もカクテルグラスをかかげてくれた

その後、バーテンが「あちらの方からです」と言って、マティーニを運んできた
素直に「ありがとうございます、ご馳走様です」と若年者らしくお礼を言った

それが気に入られたのか、紳士は自分の隣りの椅子を手で示して「こちらに来ませんか」と誘う
まさか、アチラの趣味ではないだろうな、と思いながらも、酔いも手伝って隣りの席に移る

酔っていればこそのお世辞で、紳士の服や趣味を誉めたが、本心そう思っての言葉でもあった
「いやいや、しかし貴方もお若いながら、なかなかのセンスの持ち主ではありませんか」とさらっと返され

よいしょには、よいしょか、とは思ったが、その口調、声音が魅力的で、いい気分になってしまう
「差支えなければ、ですが、どういったお仕事をされているんですか?」

「いやぁ、これはこれは、一気に核心に迫るご質問ですなぁ。ま、ギャンブラーみたいな者でしょうか」
意外な返答に、驚いて声が出ずにいると

「そう、ギャンブラーとは言っても、ご想像のような人種ではありませんがね」
そうだろう、この身なりの良い紳士が、赤鉛筆をなめなめ予想してる姿なんて思い浮かばない

「すると、外国のカジノに遠征して大勝ちしてくるとか、ですか」
「いやぁ、そんなに格好いいものではありませんよ。それに、海外のカジノは勝手が違うし…」

「となると…、株で大金を得られているとか」
「そうでもありません。あれは複雑で、私の能力では手に負えませんから」

「能力、というと、透視かなにかがお出来になって、カードや麻雀で連戦連勝、とか」
「ふふ…、いや困ったな。実は、私、ロ〇で生活しているんですよ」と、はぐらかすように笑う

「〇トって言うと、毎週あるあれですか?」
「そうです。ただし、いつでも当たるのでなるべく間をおいて、困らない程度にやっています」

「へえ〜、そうなんですかぁ。あれって、やっぱり必勝法があるんですか」
「まあ、ちょっとコツがあるんですが。…聞こえるんですよ、数字が5つ」

「そうですか、5つの数字が」
「そう、5つ。だから、ミニ〇トの数字だよ」

「それって、6つのうちの5つとか、ではないのですか」
「いいや、完全に5つの数字だけなんですよ」

「しかし、5つの数字が聴こえたら、それがあの数字だと、どうしてわkるんです?」
「なぜ、ミニロ〇と確信したか、それはその数字が伝わることを強く念じ続けたからなんです」

「はあ、念じた。そうか、僕だって当たれ当たれって、念じて宝くじ買ってますけど、ねぇ」
「ああ宝くじは、無理ですね。あれは当りが日本の何処にあって、どの束か、わかったって買えない」

「そうか、自分が選べる方が、どこでだって買えるからか。でもなんで7とか6じゃないんです?」
「最初は、私ももっと大きな金額が当たるように、7とか6を念じていたんですが、数字が多過ぎて…」

「5つまでしか、分からないんですね…」なんだか急に酔いが回ってきた
「そう、それに伝えるのにコツが幾つかあって…」紳士の声が聴こえにくい

「…をやりながら、…をすると前日に届くんですが…。ただ、当り数字が届くと、それがきっかけで、隣りの時流に移ってしまうんですよ」なにを言ってるんだろう

「貴方がSF小説などお好きなら、お分かりでしょうが、パラレルワールドは確かにあって、私も貴方も何百通りも存在してるんです。でも、当り数字が届くとそこで別の時流に移るんです」はあ?

「まあ、あまり違いがないんで、それほど問題はないんですが、このところ大分、前の時流と違う部分が増えてまして…」なんだか、弱ったような声音になってるな

「最初は、せっせと当てて、次の時流に移動していたんですが、最近、このまま行ってもっと悪い状態になっている時流に移ったら、大変だ、と思うようになって、当てるのをセーブしているんです」へぇ〜?

「でも一度でもやり方を変えたら、数字が届かなくなると思うので、受け取ることは受け取ってるんですが、リズムが壊れそうでそれも心配で…」なんだか深刻な顔をしてるぞ…でも眠い

バーテンに揺り動かされて目が覚めた時には、紳士の姿はなく、お勘定だけは支払われていた
その後、あのショットバーに二度と紳士は現れず、バーテンは今夜も静かな顔でグラスを磨いているだけ
posted by Beeまたの名は熟年のK at 11:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説

2016年10月13日

スイッチ

僕は天才科学者
自分で言うのはおかしいと思うが仕方ない、天才なんだから

しかし、そんな天才にも弱みはある
見かけはそこそこなのに、どうにも女性にもてないのだ

理由は、分かっている
なんにでも合理的に対応してしまう僕のやり方が

特に若い女性から言わせると
夢がない、考え過ぎ、面白みに欠ける、つまらない…等々、らしいのだ

そんな、感覚優先に思える女性の心理反応を理解すべく
女性型アンドロイドを製作してみたが、やはり非論理的な反応ばかりで

行動原理の解明にはつながらず、やむをえずこのタイプは廃棄して
僕にとっての、理想の女性のファクターだけを反映させた2号機を製作した

一応完成はしたのだが、エネルギーオンにするとその都度不具合が見つかる
いくら天才の僕でも、20回もやり直したらさすがに嫌になり

この研究も一時中断として、次の研究テーマのタイムマシンに取り掛かった
むろん、少々時間がかかったがタイムマシンは完成することができた

タイムマシンを起動させるにあたり、行った先の時空間に個体が存在していると
同一空間に分子構造の重複存在となり、小規模核融合が起きる可能性があるので

市街地からかなり離れた場所に第二研究所を新設して、さらに研究を進展させた
タイムマシンは研究所の地階の周囲を厚さ50pのコンクリートで囲い箱状にして

何百年単位の環境変化を予測し、エネルギー源も地階に独立設置しておいた
そこまで万全の対策を用意して、自ら実証実験に臨んだのだ

肝心のタイムマシンだが、今までは膨大なエネルギーで時空間を歪ませる理論が
主流だったのだが、僕のマシンは「時空間隙発見装置」で時間の隙間を見つけ

その時間帯にマシンを滑り込ませるという原理を応用しているので
エネルギー消費は、町を走っているEV並みで済むのだ

…という訳で、隙間の開いた約200年後(残念ながら時間帯設定の精度が甘い)の
世界に来てみたのだが、実験室内のモニターでは人の存在反応が全くない

実験室から研究所内に出てみると、自動ドアはちゃんと動くし
照明も行く先、行く先に点いて、通り過ぎると消灯する正常作動を保っている

どうやら、戦争や彗星落下、はたまた巨大地震などはなかったようだ
元々僕の研究を理解できる人間が少なかったので、研究所員は数名だったし

200年以上も経っていれば、全く所員の姿がないことは驚くにあたらない
それから、研究所の前の道路は劣化しているとは言え、植物に覆われてはいない

ということは、道路を管理する何者かが存在していることは証明されているし
空を自由に飛び回れるような文明段階には至っていないとも推察できる

テレビ、電話の類は、なんの反応もなく死んだままだ
PCをONにしてもNETにはつながらない

僕の知っている人類は絶滅して、代わりの高等生物に替わっている可能性もある
あらゆることを想定して、ロッカーに用意しておいた防護服と電撃銃を装着し

とりあえず、外に出てみた
大気にはなんの有害物質も含まれていず、むしろ酸素濃度は上がっている

研究所のガレージに保管させていたEVは無事で、短時間充電で走行OKになった
ひとまず、ここより規模の大きい第一研究所に向かうことにした

ゴムタイヤで走るタイプのEVだが、幸い道路はまずまずの状態が保たれている
車載のカーナビはGPS電波が無いのか動作しないが

昔の、と言っても僕には昨日までの記憶にある道順を辿って、第一研究所に着いた
そこにも、途中の道でも自然界にいる動物以外、人のいる気配はなかった

第一研究所のドアの認証システムはどうやら生きていて、僕を入れようとしない
まあ200年も経てば、僕はこの世に存在していないと判断されても仕方ないし

認証システムの改修や、全く別の理論で動作していても不思議はない
それでも天才の僕にかかっては、認証システムのAI程度では対抗も出来ず

10分ほどの操作で入室を許可してくれた
(どうやったかは、セキュリティに関することなので、ここでは触れないでおく)

いずれにせよ、僕の基礎データは保管されていたようで、大幅な改修や
まして新製品は登場していなかったようで、それはそれで不安になる事象ではある

所長室は昔の場所(7F701号)にそのままあり、室内も変化がなかった
その辺りは、タイムマシンの実証実験にかかる際に、念入りに命じておいたことだ

電気エネルギーはここでも活きていて、端末はホストコンピュータに接続できた
この人気の無さと、システムが200年経っても使えるということが不気味だが

この部屋は、あらゆるセキュリティが独立してあり、外敵の心配はほぼ100%ない
よって、僕は防護服を脱いでほっとくつろいで、端末を操作し始めた

僕専用のパスコードを打ち込むと、研究所のホストコンピュータが蓄えていた
200年間に国内外で起きた人類史に関わる事象を重要度順にAIが報告してくれる

重要度1位の報告を閲覧しただけで、僕には全てが飲み込めた
現在の地球には、恐らく何千人単位の人類しか残っておらず

しかも、残存人類は文明から遠く離れた場所の、特に閉鎖的な人々だけが
少数ずつ、ばらばらに生息しているに過ぎないこと

少なくとも文化的な集落は、都市や町はおろか、国家も存在していない
現在の都市は最低限のエネルギー供給施設と、インフラ補修に特化したAIが管理

今、僕が辿ってきた道路も、施設維持の電気エネルギーもなにもかも
無人の都市機能は、こうしてかろうじて支えられていたというわけだ

そして、この人類ほぼ壊滅の原因は
なんということだろう

僕がやりっ放しにしておいた理想の女性型アンドロイド2号機を
副所長のTが見つけ、彼なりに改造して、世に出したこと

その性能(気働き、外見、優れた蓄電力を持つバッテリー、更にセックス対応機能)
に加え、会話力があり、すばらしい味の料理を作るコック機能、洗濯掃除機能など

そのオールマイティさに、副所長が加味した1台ごとのオリジナル外観と個性機能
それらが相まって、F型アンドロイドは全世界の家庭に、メイドとして受け入れられ

やがて、世の男性たちをさらに深い魅力の深淵に引きづり込んだ
女性たちが気付いたときには、ただでさえ下降線を描いていた出生率はダダ下がり

じきに先進国だけでなく、中進国、開発途上国にもその傾向は及び
機械的な生産も任せられることに気付いた資本家によって、増産に次ぐ増産で

低所得者にも、貧困国家にも普及していき、半世紀で世界はアンドロイドに依存し
数を減らした人類は、生産もインフラ整備もAIに任せ、自身はアンドロイドとの

恋に溺れていた
女性たちは、折に触れ人類が直面している人口減少の危機的状況を

男どもに必死で訴えてはみたが、自分たちも
家事も、少なくはなったが子育ても、話し相手にもなってくれるアンドロイドを

手放せず、人工授精やクローン技術の進歩に賭けてはみたが
男性に始まり人類全体に蔓延していった“やる気が出ない現象”に呑み込まれ

ごくごく一部の偏屈者や、文明隔絶地の住人を除き、やがて寿命のつきた者から
この地球に別れを告げて逝ったのだ

で、今から20年ほど前に都市の人類が絶滅し、用を命じられないアンドロイドから
徐々にスリープモードに入ったらしい

それで、現在の人気の無い状況になっているのだ
状況を理解して、僕は悔いた…なぜ、2号をやりかけで放っておいたのだろう、と

今、僕が出来ることは、第二研究所に戻り、タイムマシンで元の時代に戻って
2号を完成させるか、破壊しておくことだろう

せっかくやってきた200年後の世界がこんなになってしまっているとは
常に冷静、頭脳明晰な僕にして、この失敗

思わず悪態が口をついて出た
「ああ、くそっ、いやになっちゃう、めんどくさいなぁー!」

室内に設置されているマイクが僕の声を拾い…

研究所内のどこかで

スイッチの入る音がした
posted by Beeまたの名は熟年のK at 14:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説